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ロ短調~ヴェルクマイスターで24調・第5回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、短調のトップバッターはロ短調です。

◆ロバート・D・ヴァンドール/プレリュード 第7番 ロ短調(転調なし)

★3段階に難易度分けしてあるこの曲集の、一番簡単なグループの中で非常に人気のある曲です

◆グルリット/「高貴なワルツ」Op.201-8(転調:平行調のニ長調)

★ショパンのロ短調ワルツ、Op.69-2の予備練習に使えそうな曲

短調の音階構成音を五度圏図に書くと、自然的短音階では長調と同じく半円状に連続して音が並びますが、和声的短音階(最もよく使われる)では第7音を半音上げ導音とするので、下図のようになります。(AがA#となることに注意)

主和音が「B-D-F#」、属和音が同主調のロ長調と共通で「F#-A#-C#」(長三和音になります)、下属和音が「E-G-B」ですね。
(コードネームではそれぞれ「Bm」「F#」「Em」)
ヴェルクマイスターでは、主和音の五度B-F#が狭い、属和音の長三度F#-A#が広い(ピタゴラス長三度)のが残念な点でしょうか。

一般に短調は、長調と比べて音律の弱点があまり気になりません。
少々響きが悪かろうが音程がハズレようが、むしろそれが短調曲らしい陰鬱さや苦悶の表現にプラスになることもあるからです。
で、上の2曲を弾いてみて、ヴァンドールのプレリュードは分散和音中心の書法のせいか、特に不快な点はありませんでした。
ベートーヴェンの「月光」ソナタ第1楽章を思わせる深遠な曲調が印象的ですね。

しかしグルリットの方は困りました…左手のブンチャッチャ♪の「チャッチャ」にまずい音程がたくさん含まれてるわけですよ。
どうもスカッと和音が決まらない、モゴモゴするのは弾き方が悪いのか?と最初は思ったんですが、音律のせいも多々あるようです。
しかもこの曲、これまたヴェルクマイスターが苦手なニ長調にも転調してる!
やはりこの部分も「響きがなんだかな…」と眉(耳か?)をしかめなら弾くハメになりました。
悪い音程が含まれている同時打鍵の和音が、曲中何度も鳴ると辛いものがありますね。
私はワルツの左手跳躍が不得手なこともあって、この曲はあまり楽しく弾けませんでした。

平行調同士のニ長調←→ロ短調を行ったり来たりする和音の多い曲は、ヴェルクマイスター向きではないとして良さそうです。
でも時代的に、このグルリットの全調曲集は何らかの不等分律で書かれているはずなんですけどね…
今のところ、平均律で書かれている(はずの)ヴァンドールの方が、ヴェルクマイスターでも健闘しているのが不思議です。
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嬰ヘ長調~ヴェルクマイスターで24調・第4回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、今回は調号にシャープが6つ!もつく、嬰ヘ長調です。
鍵盤上では、調号がフラット6つの変ト長調と異名同音なので、全調モノの曲集はどちらかを選んで記譜されています。
ところが2015年に出版されたメロディ・ボバーのIn All Keysでは、Book1:sharp keysとBook2:flat keysの二分冊になっていて、調号が5つ以上の調では同じ曲がシャープ系とフラット系双方で載っているんですね。
(変ニ長調と嬰ハ長調、嬰ヘ長調と変ト長調など)
読譜が得意な方で弾くもよし、苦手な方で勉強するもよし…ということなのでしょう。
…ということで、今回は次の曲を嬰ヘ長調曲として扱います。

◆メロディ・ボバー/ Reflections in the Stream(転調:平行調の嬰ニ短調)

★臨時記号がないので、嬰ヘ長調音階内の7音しか使っていません

◆ロバート・D・ヴァンドール/プレリュード 第18番 嬰ヘ長調(転調:イ長調、ホ長調)

★同じ米国教育作品のギロックやアレクサンダーの全調曲集が変ト長調を採用している中、こちらは嬰ヘ長調でした
★楽譜の指示により、中間部分以外でソフト(左側)ペダルを使用

ヴェルクマイスターでの嬰ヘ長調は、音階内に狭い五度が1つだけしかなく、ほぼ裏領域ということになります。

長三度は広すぎますが、純正五度が多いので響きがクッキリ透明で、分散和音やパッセージは長調らしい明るさがあって、なかなか良い感じですね。
主和音の五度(←重要!)F#-C#が純正なのもポイント高いです。
一方、和音の同時打鍵は三度がだいぶハズれる印象…ボバーの曲の中間部分がそうで、このような箇所は平均律なら多少マシになります。
(ただし平均律は全体に響きが曇ってしまいますが)
自分的にはヴェルクマイスターの裏系の響き、弾いていて気持ちが良いので好みです。

ところで嬰ヘ長調は、音階7音のうち5つが黒鍵…という「黒鍵の多い調」として知られています。
黒鍵は高さがあり黒鍵同士が離れているので、それを上手く利用すると「覚えやすく弾きやすい」曲を書くことができます。
急速なアルペジオが多い曲、五音音階の旋律などの場合ですね。
上掲の2曲はどちらも、メイン主題部分でそれが上手く利用されており非常に弾きやすいのですが、中間部分はそうでもないです。
相当「ゆびれん」やっていないと、黒鍵・白鍵の高さや位置の違いを吸収できず、16分音符がガタガタになってしまうでしょう。

それとこの2曲を比較すると(どちらも同じ米アルフレッド社出版の全調曲集なのに)、作曲家の才能の差があまりに顕で怖いくらいですね。
どっちがどうと言わずとも一目(一聴?)瞭然かと思いますが…。
実はヴァンドール、彼の作品中この全調曲集が飛び抜けて出来が良い(と私は思う)んですよ。
で、それまでイマイチ感があったボバーも In All Keys で化けるのを期待して楽譜買ったんですが…相変わらずの通常運転でした(苦笑)。

もっとも、単純な書法と想定内の展開に終始する彼女の作風は、込み入った曲を手掛ける前のステップとしては最適で、この曲集も慣れていない調の譜読みの練習にはむしろ向いています。
今回私も嬰ヘ長調は初めてだったので、先にボバーの曲を数日で仕上げてから、ヴァンドールの方に取り掛かりました。
後者は彼独特の変則的な転調のせいで臨時記号が多く、嬰ヘ長調に慣れてない状態でいきなりやると頭が混乱するかと思います。

ニ長調~ヴェルクマイスターで24調・第3回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、今回はニ長調です。
調号がシャープ2つで運指もハ長調と良く似ており、初心者向けのピアノ曲でもお馴染みの調ですね。
バロック~古典派時代にはごく普通に使われ、ヴァイオリンが良く鳴る調としても有名です。
ですがヴェルクマイスター的にはちょっと…な面がありまして、まあ聴いていただきましょう。

◆ギロック/「伝説」(転調:平行調のロ短調)


◆ロバート・D・ヴァンドール/プレリュード 第2番 ニ長調(転調:平行調のロ短調)


ヴェルクマイスターのニ長調は、音階内に狭い五度が3つあり、しかもそのうちの1つが主和音のD-Aです。


この「主和音の五度が狭い」は、弾いていて困りものですね。
やはり曲中によく出てくるわけですよ。
さらに平行調のロ短調に転調(ありがち)すると、その主和音の五度B-F#も狭い!
(踏んだり蹴ったり)
「伝説」のように同時打鍵の和音が多い曲は、「ボーン」「ドーン」といった鳴り方で、和音のヌケが悪く響きがモコモコしてしまいます。
和音をクッキリ決めたいな~と思っても、なかなかピアノがイメージ通りに鳴ってくれません。
純正より約6セント狭い五度は、(旋律などの)音程的にはまあ許せるのですが、響き的にはかなりキビシく、特にペダルを多用する曲では影響が大きいと感じます。

しかしヴァンドールのプレリュードのように音がバラけていれば、五度の濁りはあまり気にならず、全体に角の取れた柔らかい響きに聴こえ、これはこれでアリかな?という気がしました。
こちらは弾いていて特に嫌な感じはなかったです。

一方、主要な長三度を平均律と比べてみると、G-B、D-F#は約4セント改善、A-C#が約2セント劣化しています。
この程度だと耳の誤差?の範囲内なんでしょうか、ヴェルクマイスターで弾き慣れた(聴き慣れた)ニ長調の曲を、平均律で弾いてもそれほど違いを感じないんですね。
まあ同じようなものだ、ということです。

これがハ長調やヘ長調だと、C-EやF-Aの長三度が平均律はヴェルクマイスターより約10セントも劣化していて、「えええ~~~っ!?」と驚くほど狂っているのがすぐに分かります!
音楽的な耳にとって、10セント(=平均律半音の10分の1)の違いは決定的ということでしょう。

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