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変ニ長調~ヴェルクマイスターで24調・第2回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)第2回は、調号がフラット5つの変ニ長調です。
書法の異なる2曲を弾いてみました。

まずは右手旋律+左手分散和音の伴奏…というスタイルの曲。
◆ロバート・D・ヴァンドール/プレリュード 第16番 変ニ長調 (転調:平行調の変ロ短調)


一方こちらは和音中心の曲。
◆グルリット/「賛歌」Op.201-21 (転調:属調の変イ長調)


ヴェルクマイスターの変ニ長調は、五度が純正な一方、長三度がバカ広いピタゴラス音階になります。いわゆる音律のですね。
どちらの曲も臨時記号はごくわずかしか使われてないため、ほぼピタゴラス律で鳴っていると思って下さい。


ヴァンドールのプレリュードは澄んだ響きが美しく、旋律も伸びやかに聴こえて、弾いていても気持ちが良かったです。
中間部で右手に和音が出る箇所(ココが山場なんですが…)に、長三度の狂いが目立つのが残念とはいえ、全体的にはハマリだと思いました。
試しに使わない五度にウルフを置いたピタゴラス律で弾いてみると、楽器の響き全体がさらに良くなり、もっと気持ちが良かったです(笑)。
「ヴェルクマイスターで24調」企画でなければ、この曲はピタゴラス律で録音してYoutubeにアップしたでしょうね。

不等分律の裏やピタゴラス律が「旋律的な曲に向いている」というのは、事実だと思います。
伴奏に相当する部分も、同時打鍵をできるだけ避けた分散和音のような形にすれば、欠点である長三度の大きなズレが比較的目立たず、純正五度の多さがそれを補って余りあるので、どちらも合っていない平均律より響きのクオリティが上がる印象です。

一方、グルリット「賛歌」は、ちょっと微妙でした。
この曲は主題と2つの変奏になっていますが、四声コラール様式の主題と和音に波線アルペジオ記号がついている第二変奏は、「うむむ、三度ハズレてる…うなりも酷い…」と、眉(耳か?)をしかめながら弾いていました。
右手が分散和音になる第一変奏は、割と良いですけど。

しかしここで気をつけたいのは、グルリット(1820-1901)はその活躍年代からして何らかの不等分律を使っていた可能性が高いという点です。
ヴェルクマイスターでなかったとしても、よほど変わった不等分律でない限り、変ニ長調は「裏」となり、和音をガンガン弾いたら汚く聴こえるはず。
実はこの曲、和音メインの主題と第二変奏が「p」で、分散音型の第一変奏だけが「mf」なんですよ。
この強弱指定は、不等分律の事情を考えれば十分納得できます。
ピアノは弱音ほど音がボンヤリするため、音程の欠点がかなりごまかせるんですね。
もし逆の指定だったら、もっと酷いことになっていたはずです。

それでも変ニ長調はちょっとヘンな響き…なのは、これが不等分律の調性感!とプラスに捉えるべきなんでしょう。
(日常的な昼に対して)夜、異世界といったイメージで弾くのは悪くありません。
こういうところは平均律よりずっと感性が磨かれると思います。

なお「賛歌」を、電子ピアノのフォルテピアノ音で録音したのがこちらです。
現代ピアノの音では、全体的に中低音でモゴモゴしている曲が、クッキリ聴こえてハッとしますね。
おそらくこのような音が、作曲時のグルリットのピアノに近かったのではないでしょうか?
そして不等分律の調性感も、こちらの方が良く分かります。
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ロ長調~ヴェルクマイスターで24調・第1回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、いきなり調号がシャープ5つのロ長調から始まり始まり~♪
このシリーズで主に使う2つの全調曲集から、1曲ずつ弾いてみました。
何となく聴いてるぶんには大きな問題はない、と思いますが…

◆ロバート・D・ヴァンドール/プレリュード 第14番 ロ長調(転調:ホ長調、ト長調)


◆デニス・アレクサンダー/ 小ノクターン ロ長調(転調なし)


ロ長調はヴェルクマイスターにとって微妙な調です。
主和音の五度B-F#が狭い上、主要三和音の長三度はいずれも平均律より純正からのズレが大きくなっています。
しかし純正五度も多いので、響きとしては割とスッキリしてるでしょうか。
また広い長三度は、旋律的な曲には向いていると言われています。


弾いてみて…やはり主和音の五度が純正より6セントも狭いのは、嬉しくないというのが実感。
主和音はしょっちゅう出てくるわけです、曲中に。
スタッカートの和音がピシッと一つに聴こえないし、ペダルを踏んだ(分散)和音ではモヤモヤします。(特に中低音域)
最初は自分の弾き方やペダルの踏み替えがマズいのかな?と思ったんですよ。
でも気になる所の音を確かめると、みんな狭い五度が関係してたんですね。
平均律だとどの五度も同じなので一々気づきませんが、ヴェルクマイスターは純正五度もたくさんあり、しかも楽器全体の響きが平均律よりクリアなため、「合ってない」五度の残念感が大きいのです。

ヴァンドールのプレリュードでは、中間部分でホ長調、ト長調に転調しており、ここで左手がB-F#の他にG-DやD-Aの狭い五度も弾く(しかも空五度で!)のはどうもアカンですね。
アレクサンダーの方は和音が少なく、大部分が単音の旋律と伴奏なのでまあまあも、終止ひとつ前のアルペジオがどうもしっとりキマリません。
ここは下からB-F#-B-D#-F#-B-D#で、要するに主和音をジャラジャラ~~と弾いてるのですけど、五度・四度・長三度のどれ一つとして合ってない(いずれも平均律より悪い)のだから、余韻がうなって大きく揺れるのも当然です。

じゃあ平均律にすれば解決するのかというと、空五度問題はだいぶ改善しますが、B-F#-B-D#-F#-B-D#の方はたいして変わらない、多少マシになっても外れてるのは同じ…という印象でした。
だ・か・ら、アルペジオになってるわけですよ(笑)。
平均律の現代ピアノではどの調でも、音が太くて良く伸びる中低音域や耳が音程に敏感な中音域で和音を同時打鍵すれば、そこに長三度を含む場合かなりみっともない響きになります。
アルペジオにすればそれがだいぶ緩和されるんですよね。

どちらの曲も現代作品なので、(作曲家が意識してるかはともかく)平均律の欠点が露呈しないような書き方になってるのでしょう。
そのためヴェルクマイスターの長三度劣化領域で弾いても、決定的に困る事態が回避できるのだと思われます。
(これは他の調号が多い現代作品についても言えることです)

ヴェルクマイスターで24調シリーズ始めます

趣味で音律の研究を始めてから、子供の頃ピアノを弾いていた時は決して好きとは言えなかった、シャープやフラットがたくさん付く調に何やら(笑)興味が出てきました。
ロマン派を中心に、変ニ長調や変ホ短調などの曲を打ち込みしているうちに読譜にも慣れたので、ピアノを再開してからは基礎練習を全調タイプにして、楽曲も調号が多いものを結構弾いています。
そこで現代アメリカの「全調もの」教育作品をメインに、ヴェルクマイスターで24の長・短調全ての曲を演奏してみることにしました。

え!?そんな曲集あるんですか?…って、日本でもピアノ学習者に超人気&定番のギロック「叙情小曲集」はその一つ、原題を訳すと「ロマン派様式の叙情的前奏曲集~全ての調による24の小品」となります。
そして日本では出版されていませんが、ギロック同様に(日本の)初級後半~中級程度の技量で弾ける全調曲集が、アメリカにはまだたくさんある↓↓↓んですよ♪

ロバート・D・ヴァンドールPreludes: 24 Original Piano Solos in All Major and Minor Keys」…標題なし、単純な器楽的モチーフから成る前奏曲本来のスタイルが主。中間部分の独特な転調ワザが光る。ブルクミュラー~ソナチネ終了程度まで難易度の幅が広い。

デニス・アレクサンダー24 Character Preludes」…標題あり。難易度的には「抒情小曲集」の次にやるのに適しているが、指定テンポで弾くにはかなり難しい曲も。古典的なものから現代風まで多彩な様式。

メロディ・ボバーIn All Keys: Sharp Keys」「In All Keys: Flat Keys」(2冊で24調+α)…標題あり。新鮮味はないが通俗的で分かりやすい作風。ポピュラー系の曲も混じる。難易度はブルクミュラー中盤~ソナチネ前半程度。(2015年に出たばかりの曲集です)

ヴィクター・ラベンスクPiano Miniatures: 24 Short Solos in All Major and Minor Keys」…標題あり。短く易しい。ポピュラー系の曲も混じる。ブルクミュラー程度で問題なく弾けそう。

この中で私が断トツに気に入っているのが、ヴァンドールの前奏曲集です。
なのでこれをメインに、サブがアレクサンダー、補欠にボバー(彼女は人気ありますが、私には凡庸な作曲家としか思えません)から選曲して、ギロックも少しは混ぜるかも?と予定しています。
ほんとはヴァンドールのを全曲弾けばいいんですけど、現在の私の技量ではノーミス演奏できるかビミョーなのが2曲ほどあるので。
それからオマケとして現代作品ではありませんが、グルリットの「24の調による練習曲」も少し入れようかなと思っています。

曲の書法によって音律の長所や欠点の出方が違うので、一つの調につき2曲ずつ…となると48曲!ですか、ちょっと多いですね。
あまり解説の必要がない調は1曲にするかも(笑)。
このシリーズとは関係ない曲も多少は弾きたいし、まあ気長にやることにします。
なお条件を揃えるために、演奏記録時の電子ピアノの音色は「ブライト」、アンビエンス(空間残響)は7に固定します。
ということで、次回から♪(^ ^)

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