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バッハと音律~まとめ

イギリス組曲の中でも人気の第三番ト短調プレリュードを、ウルフ四分割♭型の音律で鳴らしてみました。
この曲があるから「第三番が好き」という方も多いんじゃないでしょうか。
記事のBGMにどうぞ。↓↓↓



バッハのチェンバロ曲と音律については、とっかかりとして、調号が♭1つの「イタリア協奏曲」と「半音階的幻想曲とフーガ」を、最小限修正したミーントーンで鳴らしてみよう&上手くいくかな・・・というところから始めました。
前のブログですが、以下に楽譜付き音源をアップしています。
 ♪イタリア協奏曲第一楽章(ピアノ版)第三楽章(チェンバロ版)
 ♪半音階的幻想曲とフーガ(ピアノ版)
いずれもC#-G#-E♭-B♭でウルフを三分割しています。
(つまり通常のミーントーンから2音のみ修正)

続くト長調(一部の変奏でト短調)の「ゴルトベルク変奏曲」では必要に迫られて?ウルフを四分割し、その音律を組曲にも試してみました。
組曲には色々な調性のものがあるので、ウルフを分割する位置を変えた♭型と#型も考えましたが、♭型は適合曲が多い一方、#型はあまり良い結果が得られませんでした。
(バッハが調性によっていくつかの音律を使い分けていたかも?という予想は、ここではずれたことになります)
そこで組曲全般をカバーできるように、ミーントーンの五度を一部純正五度に置き換えた、修正ミーントーンと言うよりは不等分律に近い音律を考えました。
これは組曲だけでなく、「インヴェンションとシンフォニア」や7曲あるトッカータも、調性感重視で行くなら使えるかな・・・の音律です。

このように、ミーントーンから始めて少しずつ音律を均していくと、その音律一つでカバーできる曲が増えて「便利」になる一方、純正音程による美しい響きは後退していきます。↓↓↓



上図の「組曲全般用」は、ヘ長調とハ長調の間を行ったり来たりするような曲であれば割と良いですが、それ以外だと純正長三度の御利益?が減るためか、何となく平凡な聴こえ方になってしまいます。
(例えば上掲のト短調プレリュードは、「組曲全般用」よりも「ウルフ四分割♭型」の方が和音が美しく溶け合って、耳に心地良い)
打ち込みやってると良く分かるんですが、聴きながらキモチ良かったのはウルフ四分割までなんですよ。(笑)

さらに均した「ヴァロッティ」や、「平均律クラヴィーア曲集」向けの音律になると、極端な不良音程が出ることはないという消極的利点だけで、音律が音楽に対してプラスに貢献する要素はほとんど感じられませんでした。
何にでも使える音律って、誰でも着れるフリーサイズのTシャツと同じで、絶対に「ステキ!似合う~~♪」にはならないんですね。

おそらくバッハはかなり初期の段階から、少なくとも「組曲全般用」程度かそれ以上に均した音律でチェンバロ曲を作曲していたと思われます。
これが意味しているのは ─── 彼は純正音程の美しさに依存せずとも聴くに堪える音楽を追求していた ─── ではないでしょうか。
バッハが平均律のピアノでも良く演奏され、音楽的にも高く評価されているのは、音律や楽器の響き云々という次元を超えたところで、作品の本質的な部分が成立しているからだと思います。
少々ヘンな?音律で演奏されても、ビクともしない・・・それがバッハなんでしょうね。
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まだまだこんな音律も

平均律クラヴィーア曲集第一巻・嬰ハ長調プレリュード~音律は後述の1/8P.C.配分↓↓↓



前回使った音律は12の五度のうち、4つが純正より4セント・別の4つが2セント狭く調整されています。
これをもう少しスッキリさせて、次のような音律にすることもできます。↓↓↓



現在この1/8ピタゴラス・コンマ(以下P.C.)を使う音律は、色々な配置が考えられていますが、主として20世紀の産物と思われるので、もしバッハが経験的にであれこのような調律を行っていたなら、弟子をして「誰にもできぬような~」と言わしめるに十分でしょう。
(当時は電子チューナーなど無かったので、耳を頼りに純正よりも2~4セントほど狭い五度を八箇所くらいにバラまいていたとも考えられる)
しかし1/8P.C.配分と12平均律との違いはごくわずかで、曲を聴いて区別できるか私は自信ありませんね。

ここまで細かくしなくても、1/7P.C.(約3.4セント)や1/6P.C.(約4セント)でも、狭い五度の配置しだいで「平均律クラヴィーア曲集」向きの音律が色々作れます。
調号の少ない調を優先し、かつピタゴラス長三度(純正五度が4つ並ぶ)ができないように考えると、例えば↓↓↓



ヴェルクマイスター(第一技法第三番)が想定されていたという説もありますが、同じ1/4P.C.配分でも配置を変えればピタゴラス長三度を避けることができます。



純正より6セント狭い五度は、不具合を起こさないギリギリの線なので、狭く調整する五度の数をできるだけ少なくするなら、1/4P.C.の配置になるでしょう。
純正音程が多ければ楽器の響きが良くなるので、これは一利ある選択と言えます。
もちろんP.C.を「等分」するキマリは無いので、こんなのもアリでしょうね。↓↓↓



ただこの種の複雑な構成の音律が、単純なものと比べてどれほど利点があるのか、疑問ではあります。

「平均律クラヴィーア曲集」は(一巻の方は特に)ピカルディ終止が多く(ロ短調でロ長調終わり・嬰へ短調で嬰ヘ長調終わりなど)、音律的にアンマリな書き方が目立ちます。
かなり均した不等分律の「調性感」とやらはわずかで、ならばいっそ12平均律で演奏するのも一つの見識では?と思うほど。
途中で調律替えでもしない限り、一つの音律ではどの曲も「そこそこの」鳴り方しかしないので、そういう意味ではとても残念な曲集です。
音律のテスト用としては大変重宝していますが・・・
(この曲集が書かれた最大の目的は、結局それなんじゃないですかねえ????)

この音律でどう?「平均律クラヴィーア曲集」

私なりに考えた「平均律クラヴィーア曲集」用の音律で、前回ヴァロッティで鳴らしたのと同じ第一巻24番プレリュード(ロ短調)を試してみました。↓↓↓



ヴァロッティでの問題点は、例えばこういう箇所で突然鳴る、ピタゴラス長三度(純正五度を4つ重ねてできる、広すぎる長三度)です。↓↓↓



#が二しかつかないロ短調ですが、こちらで説明しているように、古典調律にとって苦手な音程が頻出します。
しかも最後はロ長調でピカルディ終止・・・ヴァロッティではB-D#もピタゴラス長三度なので、(転回した短六度も)大きくうなりが出てしまいます。
24の長短調全てを扱うこの曲集では、ヴァロッティの広い長三度(純正五度が並んでいる、いわゆる「裏」)領域もフルに使うので、やはりもう少し ─── というか気持ちだけでも(笑)何とかしたいところです。
そこで、このように考えてみたんですね。↓↓↓



これで最悪の長三度でも、ピタゴラスのそれより4セント改善されました。
ごくわずかの違いですが、それでもヴァロッティの時はつんざくように鳴っていたF#-A#(B♭)やC#-E#(F)の和音が、少しおとなしくなっています。
ピタゴラス長三度を軽減するための合計-4セントの配置は、他にも色々考えられますが、不必要にデコボコさせず、またここまでの流れ?で五度圏のDとG#を結んだ斜めの線で対称となるように考えました。



ヴァロッティもこのD-G#線対称タイプの音律です。
ヴァロッティがチェンバロ界で広く使われるようになったのは、実際「それなりに良い結果」が得られているからなんでしょう。
(いくら電子チューナーのプリセットに採用されても、合わない曲が多いのではこんなに普及しないはず)
そして現在チェンバロで弾かれる曲は、他を圧倒してバッハが多い・・・つまりヴァロッティは「バッハと相性が良い」に違いなく、これは私も今まで調べてきてそう思います。
(逆にスカルラッティでは、ヴァロッティだと#系の曲が苦しく、クープランやラモーはそこまで均さずとも良さそうに感じる)

「平均律クラヴィーア曲集」の音律が、バッハの普段使い?の音律からもう少し均したものだったとすれば、それをD-G#対称配置で考えてみるのは、一理あることだと思います。

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