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変イ長調~ヴェルクマイスターで24調・第7回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、今回は調号がフラット4つの変イ長調です。

◆メロディ・ボバー/「夏の印象」(臨時記号なし)


◆ロバート・D・ヴァンドール/ プレリュード 第13番・変イ長調(転調:ホ長調など)

★御存知、バッハ「平均律クラヴィーア曲集・第1巻」変イ長調プレリュードのパロディ!


ヴェルクマイスターの変イ長調は、主要な長三度が全て平均律よりも劣化しており、ほぼ裏領域での演奏になります。
しかしその一方で純正五度が多いため、クッキリした透明度の高い響きが特徴。
ヴェルクマイスターが「合う」かどうかは、曲の書法しだい…になるでしょう。

「夏の印象」は、「右手旋律+左手分散和音」で書かれているメイン主題はまあ良いんですけど、和音が多い中間部分、特に42秒過ぎで長三和音をガ~ン♪と弾く部分が、ど~にも悪いですね。
ハズれてるのがハッキリ分かります…山場に向かう大事なところなのに。
これが7や9の和音だとか、不協和音程が入ってるならアラ隠しになるんですけど、まともな長三和音に加えて耳が敏感な中音域、音律の弱点が直接攻撃された感じです。
全体的に澄んだ響きの中、よけいに目立つんですね。

しかしまあこの曲は臨時記号もないし、曲の書法や和声進行、展開がごくありきたりで、音律のテスト用には向いてます。
ヴェルクマイスターでの変イ長調の弱点が正直に出た、ということでしょう。
ボバーの全調曲集《In All Keys》には、音楽的には大して面白くなくとも、テスト用に使える曲がけっこう多いです。

一方、ヴァンドールのプレリュードは音律の弱点が気にならないどころか、ヴェルクマイスターのほぼ裏領域を弾く楽しさが味わえました。
明るく澄んだ響きがモダンな曲調とベストマッチですね。
意表をつく突然のホ長調への転調(同じ旋律なのに黒鍵と白鍵がほぼ逆になる)や、そこから変イ長調に帰る不思議なツナギ部分、いずれも快調♪
実はこの曲、D-Aにウルフを置いたピタゴラス律でもバッチリなんですよ。
演奏はこちら
つまり長三度が悪くてもほとんど影響ないんです!

サンプルの2曲は現役作曲家による作品ですから、どちらも平均律のピアノで作曲されてると思われます。
もともと長三度が大きくハズレてる平均律、それに最適化して書かれてる作品なら、ヴェルクマイスタ-など不等分律の裏やピタゴラス律(ウルフに抵触しなければ)で演奏しても、そんなに「悪くない」はずです。
しかし「夏の印象」のような曲は平均律でもイマイチ、つまり当該作曲家の耳が音程や楽器の響きに対して鈍感?な可能性があると考えられます。
強弱や音の置き方などを工夫すれば、広すぎる長三度が目立たないようにする、むしろそれを利用した「平均律ならでは」の作品を書くことだって、いくらでもできるんですけどね…?

変イ長調と同じくヴェルクマイスターで「ほぼ裏」の嬰ヘ長調でも、ボバーとヴァンドールの曲を試しましたが、前者は中間部分で和音のハズレが目立った一方、後者は広い長三度がモチーフに明るい伸びやかさを与えている印象で、演奏していても楽しかったです。
平均律で作曲された曲を古典調律で弾いてみると、作曲家の耳の程度がわかる!?…なんてことになるかもしれません。
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ピタゴラス律でガーン♪と派手な曲

私の電子ピアノではピタゴラス律の時、基音Cの初期状態ではG#-E♭にあるウルフが、基音をF#に変更するとD-Aに移動します。
こんな白鍵領域のド真ん中にウルフがあったら弾ける曲なんてない? いえいえ、わざわざ探さなくても適合曲が結構見つかるんですよ。

派手な演奏効果で聴衆ウケを狙う作品を集めた、ロバート・D・ヴァンドールの「Celebrated Virtuosic Solos Book5」に、そんな曲が2つもありました。

★「旋風」(ホ短調、転調なし)


★トッカータ ヘ短調 (転調:変ロ短調)


「旋風」は4度・5度の使用が多いので、その点はピタゴラス律向きです。
しかしホ短調なので白鍵を多く使い、静かな中間部分では長・短3度もだいぶ出てきます。
にもかかわらず破綻したり音痴にならないのは、ピタゴラス律に偶然できる純正に近い長・短3度のおかげなんですね。

★これについて詳しい説明はこちら

この曲ではウルフをまたいだ白鍵の間を何度も音が行ったり来たりしているも、何故かDとAだけはカチ合わずに済んでるのでした。
実はペダルが効いた状態でAの少し後にDが鳴る(つまり4度音程での近接使用)ことが2回あり、ヴェルクマイスターからピタゴラス律に切り替えた当初は「あ…ここが…」と少し気になったんです。
しかし、テンポが速いことや同時に他の音もガチャガチャ(笑)鳴っているので、そのうち自分でも分からなくなってしまいました。
(もしどの箇所か気づいたら、相当耳の良い方です)

音の芯が明確で透明度の高いサウンドは、弾いていてすこぶる爽快です。
特にコーダは、左手で強打するE-Bの空5度と右手の分散和音「E-F#-B」、すべての音が整数比になっており(E-F# は純正律の大全音になり振動数比8:9)、ペダルで響いてとてもキレイです。
終わっても音が消えるまでずっとそのままにしていたい気持ちですが、楽譜では2拍で切ることになっているので、やむなく途中でペダルから足を上げています。
(平均律ピアノだと相当うなりが出て響きが汚いので、すぐ切る指示なのでしょう)

一方、黒鍵を多く使う「トッカータ ヘ短調」は、関係ない所にウルフを飛ばしたピタゴラス律の使い方といえます。
聴こえている長・短3度の大部分は純正から大きく外れていても、主要部分ではそれらの同時打鍵がないことと、短調曲は長調曲よりも3度の狂いが気にならないので、5度が合っているクッキリ感によるメリットの方が大きいですね。
和音を強打する中間部分は3度音程の悪さが目立ちますが、「美しさ」をウリにする曲じゃない(笑)ので、もう迫力と勢いで押し切ってしまいました。
とにかくガーーーン♪ゴーーーン♪と豪快にピアノが鳴り、それだけでもう十分な魅力です。

どちらの曲もピタゴラス律にすると、長時間ヘッドホンでガンガンと練習しても耳が全く疲れないのも嬉しいところ。
同じ電子ピアノなのに、他の音律の時とは別楽器になったような印象です。
電子ピアノでさえこうなんだから、もしスタインウェイのフルコンなんかをピタゴラス律に調律したらどうなるんですかね?
想像するとちょっと怖いくらいです。
なおD-Aが狭いウルフ…は、キルンベルガー第1法と同じなので、上記の2曲はどちらも第1法でも演奏可能です。
特に「旋風」は白鍵領域の純正長・短3度が利用でき、ピタゴラス律の時よりもさらに良くなることでしょう。

ホ長調~ヴェルクマイスターで24調・第6回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、今回は調号がシャープ4つのホ長調です。

◆デニス・アレクサンダー/「天上の子守歌」(臨時記号が一切ないので、ホ長調音階の音しか使っていません)


◆グルリット/「舟歌」Op.201-15 (転調なし)


ホ長調の音階構成音は五度圏図ではちょうど下半分で、ヴァルクマイスターの半裏領域といったところでしょうか。
狭い五度は音階内にたった1つ(B-F#)あるだけです。


最も重要な主和音の五度E-Bと、下属和音のA-Eが純正なのが大きな利点ですが、その一方で長三度は全て平均律よりも劣化しています。
しかし実際に曲を弾いてみると、広めの長三度は明るく旋律も伸び伸び聴こえて悪くなく、純正五度のクッキリした響きと相まって、総合的には非常に良い印象でした。
ホ長調に対して何となく自分が持っていたイメージと、ピッタリの鳴り方するんですね。
特にグルリット「舟歌」は爽やかで音律とのハマリ具合が絶妙、弾いていても気持ちが良かったです。

ところで私は子供の頃、ご多分にもれず「バイエル」でピアノの勉強を始めましたが、バイエルではフラット系は調号2つの変ロ長調までなのに、シャープ系は何故か調号4つのホ長調まで登場します。
当時からすでに、ハ長調からト長調⇒ニ長調⇒イ長調…とシャープが増えるにつれ、音がニギニギ(変な表現ですが、ホントにこういう感じ)してきて緊張度が高くなるけど、それがホ長調になると急に緩んでおおらかになるイメージを持っていました。
突然広い牧場に出たような気分なので、ホ長調の自分的イメージカラーは緑色ですね~、もうこれ以外考えられません(笑)。
本来、平均律の電気オルガンやピアノではこのような調性感なんて無いはずなのに、不思議なものです。

不等分律が主流だったバロック末期や古典派からロマン派の時代、よほど特殊な音律でもなければ、シャープ系ではホ長調あたりから目立って長三度が広くなるはずですから、その印象がホ長調のイメージを形作るとか、作曲家も無意識のうちにそれに影響されてしまうのかもしれません。
または「この曲の性格にはホ長調がピッタリだ」という順番もあるでしょうね。
現代の作曲家であっても、全調曲集のような「調」を意識する作品の場合は、古典作品を聴いて形作られた調性格(といっても共通認識があるわけではないので、その人なりの…でしょうけど)に有形無形の影響を受けているのだと思います。

◆オマケ◆
シューマン《ユーゲントアルバム》からホ長調の「春の歌」を、電子ピアノのフォルテピアノ音+ヴェルクマイスターで演奏したものがこちら
クッキリと明るいヴェルクマイスターのホ長調と、春の到来に心浮き立つ曲調が相性抜群、同曲集の「五月、愛する五月」もやはりホ長調です。

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