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ミーントーンのウルフと基音の関係

色々な音律(スケール)が設定できる電子ピアノで、ミーントーンにした時の基音ウルフの位置について説明します。

初期値で基音がCの時、ウルフはG♯-E♭にある機種が大半ではないかと思います。
確認のため、実際にG♯-E♭を弾いてみてください。
この2音、鍵盤上の見かけは5度ですが、音名を見て分かるように実際は減6度の不協和音程です。
(異名異音のミーントーンでは、G♯をA♭の代わりにできません)
とても5度に聴こえる響きではないので、ここがウルフであれば聴いてすぐ分かるはずです。
以上の状態であることを前提に、話を進めます。

C音を時計の12時の位置にした、音名の五度圏図で考えると簡単です。


基音がCの時、ウルフは時計の8時~9時にありますね。
基音を他の音に動かすと、この位置関係を保ったままウルフも動きます
例えば基音を時計と逆回りに1時間動かしてFにすると、ウルフも逆回りに1時間動きます。
時計回りに1時間なら、ウルフも時計回りに1時間…


この時、ウルフの移動に伴って音名の一部が変化することに気をつけます。
基音Cと比べた場合、基音Fでは「G♯⇒A♭」となり、基音Gでは「E♭⇒D♯」となります。
基音を時計と逆回りに動かせば♭音が次々と出現し(その代わり♯音が減る)、時計回りなら♯音出現の一方で♭音が減る、と考えればいいですね。

基音B♭と基音Dの場合ならこうなります。


要は楽譜を見て使われている音名を調べ、それが(できるだけ)音律上に用意されるよう、基音を決めればいいのです。
注)1曲の中に、E♭とD♯音が混在するなどの場合は、異名音のうち一方を優先することになります。実際に弾いてみて良いと感じる方を選んでください。

なお基音を、五度圏で初期値と反対側の6時の位置に持ってくれば、ウルフは2~3時の位置に来ます(上図の右端)。
この場合「どちら回り」に基音を動かしたかで、音律上に存在する音が異なることになります。
私が使っている電子ピアノでは、基音設定の音名が(G♭は無く)F♯なので、一応は時計回りなのでしょうが、G♭と置き換えて音名を振り直して使うことも可能かと思います。(そういう曲があればですが…)

一般に、ヴァージナル楽派や初期~中期バロック、後期バロックでも近親調転調だけですんでいるような鍵盤曲は、ウルフの位置を工夫すれば(完全に良好とは言えないまでも破綻せずに)ミーントーンで演奏できる曲が多く、ヴェルクマイスターなどの不等分律や平均律では味わえない「何か」を感じられることと思います。
その際に通常のピアノ音だと、ミーントーンでは音が太い&響きがモヤりがちになるので、気になる場合はフォルテピアノ音やチェンバロ音をお試しください。

【参考例】バッハ/インヴェンション14番を、ミーントーン+フォルテピアノ音で演奏しました。A♭音があるので、基音をFにしています。


★最初の確認の段階で、ウルフがG♯-E♭でない場合は、全ての5度を弾いてみてウルフを探し(たぶんD♯-B♭かと)、五度圏図に基音Cとウルフの位置を書いてみます。
基音を動かすと、その位置関係を保ったままウルフが移動します。
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ヘ長調~ヴェルクマイスターで24調・第9回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、今回は調号がフラット1つで初心者向けの曲にもよく使われるヘ長調です。

◆ロバート・D・ヴァンドール/プレリュード 第4番 ヘ長調


◆デニス・アレクサンダー/モーニング・グローリー


今のところ私は、ヴェルクマイスターが一番美しく響くのはヘ長調ではないか、という印象を持っています。
少なくとも音律オモテ系の長調では圧倒的に良いですね!
え、ハ長調じゃないの?と思う方もいるでしょう、でもハ長調は主要な長3度は良くても主和音の5度C-Gと属和音の5度G-Dが狭く、ペダルを多用する曲ではモヤモヤするんですよ。
その点ヘ長調は、主和音のF-Cと下属和音B♭-Fの5度がどちらも純正なのが非常に効いています。


また主要な長三度を見てみると、F-AとC-Eは純正でないまでも非常に良く、下属和音のB♭-Dが少々落ちますが、それでも平均律長3度よりはマシで、よほど相性の悪い曲でもない限り気持ちよく演奏できます。
逆に、ヴェルクマイスターで慣れたヘ長調曲を平均律で弾くと、F-AやC-Eの長3度音程のあまりの悪さにゲゲッ!っと驚くことはしょっちゅうです(笑)。
平均律しか知らなかった昔、こういう音程の酷さに気づかなかったなんて、今では信じられないですね。
もっとも、ある年齢まで平均律にどっぷり浸かっていても、その後色々な音律を体験して耳が磨かれれば、「違いが分かる」ようになるとも言えます。

読譜しやすいヘ長調ですが、私は昔あまり好きではありませんでした。
黒鍵位置の関係で、音階の運指がやや変則的だからです。
ト長調やニ長調などのシャープ系の方が、断然弾きやすく好きでした。
でも現在、ヴェルクマイスターを常用音律としている限りでは、これが逆転してしまいましたね。
弾きたい曲がヘ長調だと、ラッキー♪と思います。
一方でト長調やニ長調の曲は何となく後回し、やむを得ず?弾く時は、ヴェルクマイスターを使わず、平均律にしてしまうこともあるくらいです。
音律の影響って大きいですね~!

ト短調~ヴェルクマイスターで24調・第8回

ヴェルクマイスターで24調シリーズ(詳細)、今回は調号がフラット2つのト短調です。

◆ギロック/荒れ果てた舞踏室 (転調:ニ長調)


◆ロバート・D・ヴァンドール/プレリュード 第12番・ト短調(転調:ハ短調、ハ長調など)


ト短調は主和音・属和音・下属和音の5度全てが、ヴェルクマイスターの狭い五度C-G-D-Aになり、響きが曇ってモコモコする印象です。


それが短調の陰鬱さを強調する効果もあるとは言え、純正5度の多い「裏」の透明感を知っていると、演奏する楽しさはイマイチでした。
まあ「荒れ果てた舞踏室」は、表題の雰囲気と合っていると言えなくもないですけど。
しかしヴァンドールのプレリュードは、曲全体にペダルを使い、しかも左手の中低音に空5度が多いため、音のヌケが悪く少々弾きにくかったです。
ハ短調やハ長調に転調しても、主和音の5度は狭いままで、肝心な所でスカッと鳴ってくれません。
この12番は、曲集中の秀作の一つと思うので、ヴェルクで24調シリーズやってなかったら、基音変更などでもう少し音律を工夫したでしょうね…ちょっと残念。

まだ記事は書いてませんが、ト短調の同主調であるト長調も同様の理由でモコモコ(笑)してますから、この2つの間で同主調転調する曲は、ヴェルクマイスター向きではないと思います。
一般に、調号の少ない曲は古典調律、多くなるに従って平均律が有利…などと言うのは、長三度のことしか考慮してないのでしょう。
ペダルを多用する曲では、5度が狭いのは辛いです。

ところでヴァンドールのプレリュードには、長・短調の他に 34秒~43秒の部分で、ヘ音を主音とするリディア旋法(Fリディアン・モード)が4小節だけ登場します。
調号で♭の音に全てナチュラルが付き白鍵だけを弾くので、最初はハ長調に転調したのかな?と思いました。
しかしどうしても主音がハ音(階名:ド)には聴こえず、しばらく楽譜とにらめっこしていたら、リディア旋法(階名:ファソラシドレミファ)だと気づいたのです。
これはなかなか効果的で、ヴェルクマイスターも美しく鳴るため、弾いていて一番気持ち良かった箇所です。
また、平均律にした時に一番崩れる(笑)のもここでした。

ヴァンドールの作品は、このプレリュード集以外のものもたくさん弾いてまして、彼は旋法が大好き!なのが良く分かります。
ちょっと変わった雰囲気だなあ…と感じた部分を調べると、たいていその手口。
ただこの曲集は一応「24の長短調で」という触れ込みなので、旋法の使用は控えめのようですね。

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