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ホ短調からホ長調への同名転調

引き続きバッハの組曲でこちらの音律↓↓↓の使い勝手を試しています。



白鍵がミーントーンと同じ音程なので、例えばハ長調で全く臨時記号がない曲なら、ミーントーンで弾いた時と変わりません。
黒鍵が多い曲ほど、純正よりも広い長三度が増え、また五度も色々です。
いわゆる「不等分律」的な響きになってくるわけですね。

調号の少ない曲は特に問題ないので(もっとも、純正長三度がもっと多い修正ミーントーンに比べると、少し平凡な響きになる)、まずは♭3つのものを・・・
フランス組曲第二番(ハ短調)のアルマンド



まずまずです・・・一小節目の三拍目で、広い五度A♭(G#)-E♭をまともに弾くのが減点ですが。
他に音が無く、しかも中~低音域なので「合ってない」のがはっきり聴き取れます。
ただ興をそぐほどではないし、それ以外は耳障りな音程は特にないかと。

続いてイギリス組曲第五番、こちらは#1つのホ短調ですが、パスピエ II では同名長調のホ長調(#4つ)になります。
↓↓↓(パスピエ I へのダ・カーポ省略───新全集版ではダ・カーポなしです)



この音律で聴くと面白いですね~♪
ホ短調部分は、まあ「普通」の鳴り方です。
しかしホ長調になると、はっきりと長三度が広いのが分かり、ちょっとユーモラスなメチャ明るい印象になります。
単なる短調⇒長調の違い以上の、別人28号(爆)的変化!
これは悪くないと思いますがいかがでしょうか。

ハッキリ言ってこの音律でホ長調はキツイ(すでに主和音長三度E-G#が相当広く、属和音B-D#はもう「不良」)のですが、ある程度それを前提にした曲の書き方と感じます。
これと全く同じではなくても、似たようなタイプの音律をバッハが使っていた可能性は十分あると思いますね。

イギリス組曲は四番を除き、同名長・短調に転調する楽章が含まれています。
一番のブーレ・・・イ長調(#3つ)⇒イ短調(調号なし)
二番のブーレ・・・イ短調(調号なし)⇒イ長調(#3つ)
三番のガヴォット・・・ト短調(♭2つ)⇒ト長調(#1つ)
五番のパスピエ・・・ホ短調(#1つ)⇒ホ長調(#4つ)
六番のガヴォット・・・二短調(♭1つ)⇒二長調(#2つ)

四番はメヌエットがヘ長調⇒二短調となり、これは平行調(調号が♭1つで同じ)転調です。
なぜ四番だけが同名転調ではないのか?
それはズバリ(笑)、音律的にヘ短調はちと困るだったからではないでしょうか?
実際バッハは、#4つのホ長調はフランス組曲六番で使っていますが、♭4つのヘ短調組曲は書いていません。
一方「インヴェンションとシンフォニア」(当然「平均律クラヴィーア曲集」も)にはヘ短調曲があるので、こういう点がバッハが「全調に対応できる相当均した音律」と「それほどでもない不等分律」を使い分けてたのでは?と私が思う理由になっています。
少なくとも全調対応用の音律で、組曲(特に調号の少ないもの)やゴルトベルク変奏曲を演奏するのは、得策とは言えないでしょうね。
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バッハの汎用音律を推測してみる

ウルフを等分割した広い五度4つと、残り8つが純正より約5.5セント狭い五度・・・の修正ミーントーン音律から、狭い五度をあと2つ減らしてバッハのチェンバロ曲(平均律クラヴィーア曲集は除く)に最適化した音律を考えてみます。
純正より約5.5セント狭い五度が6つになるので、-5.5×6=-33、-24-(-33)= 9 となり、およそ+9セントを適当な広い五度で分け合えばいいことになりますね。
これを6つの五度全体に「散らして」しまう・・・というのも少しナンなので、一部に純正五度を取り入れると、例えば次のような案が考えられます。



↑↑↑どちらも一長一短ありますが、両者はC#とE♭の高さが約2セント違うだけで、曲の中ではそんなに大きな差は出ませんでした。
それよりも重要なのは、こちら!↓↓↓



バッハに関しては、F~B にミーントーンの五度を配置した方が、結果が良いと感じるのです。
(色々と鳴らしてみて確かめました)
この配置は、白鍵の音程がミーントーンと同じになるんですね。
一般に「ラモーの音律」と言われているもの(解釈にはいくつかある)も、このタイプです。
ミーントーンで8つもあった純正長三度は、もうF-A、C-E、G-Bの3つしか残ってないので、修正ミーントーンというよりは不等分律に近いと言えるでしょう。

しかしこの「F~B配置」は#系に弱いのでは?というツッコミが来そうです。
理屈では全くその通りですが、実際にバッハの曲を鳴らしてみると、長三度が広いならば「それなりの」書き方をしているように思えます。
前回の記事で、#系の最適化音律なのにビミョー感漂っていた(笑)、イギリス組曲第1番イ長調のプレリュードを、最初の図の右側の音律で演奏してみました。



この音律の、音程的に不利な領域で音楽が展開している割には、上手くまとまって聴こえませんか?
純正長三度の出番はほとんど無いかわり、広めの長三度と明るくのどかな田園風の曲調が良く合っています。
もう一つ#の多いホ長調、フランス組曲第6番のサラバンドは・・・↓↓↓



テンポが遅く和音中心なので、フランス組曲全体の中で音律的には一番厳しい楽章です。
転調してロ長調になる箇所などは、実際かなりキツい響きになりますが、これこそ白鍵中心の調とは異なる調性感だ ─── と思って聴けば、そんなに不快な印象ではないです。
このフランス組曲第6番は、G・D・A・E・B・F#・C#・G#・D#・A#・E#・B#の12音しか使われてないので、理屈から言えばB#-Gにウルフを移動したミーントーンで弾けるはず。
しかし実際は、B#音が低すぎてコケる箇所がいくつかあり(サラバンド冒頭小節の二拍目など)、ミーントーンの五度ばかり並べた音律ではダメな音程が要求されていることがわかります。
純正より広い長三度があってこそ可能になる和音や旋律もあるということですね。

懸案のイギリス組曲第一番イ長調

C#からFまでを広い五度にした修正ミーントーンでは、#が2つ以上ついたバッハの組曲がイマイチなので、♭系の曲に対して以前試みたように、今度は#系の調に最適化した音律を作ってみました。
4つの広い五度の位置を、通常型から時計回りにひとつ動かして、G#からCまでにします。



通常型と比べると、E-G#の長三度が純正になり、厳しかったB-D#もまあまあになります。
最悪音程は、C#-FだったのがG#-Cに移ります。
これなら通常型で微妙&ダメ判定だった組曲も、ワンランクアップしそうですよね・・・でもなんで(汗)なんでしょう???(^ ^;)

この#型修正ミーントーンで、イギリス組曲第1番イ長調・プレリュードを演奏してみました。



ダメ判定だった通常型よりは、良くなってる面もあるんですよ。
でも…どことなく不安定&音痴っぽい箇所があるのに気づきませんでしたか?
楽譜を見ながら聴いていると良く分かりますが、時々G#音が低すぎて変なんです。
イ長調ベースなのでG#音は頻出ですが、その全部がおかしいのではなく、直前や同時に鳴っている音との関係で、時々まずい現象が起きるようです。
実際、この音律ではG#が相対的に最も低い音なんですが・・・

この(組)曲だけでなく、パルティータ第4番ニ長調や、フランス風序曲(パルティータロ短調)、トッカータ嬰ヘ短調BWV910、同二長調BWV912でも、低すぎるG#が気になる箇所があります。
つまり#型にすると、一部の長三度は改善されるが、別の問題が出てくるんですね。
(もっとも、フランス組曲第3番ロ短調・6番ホ長調やトッカータト長調BWV916は、低いG#音が目立つ箇所が少なく、全体的には通常型より良くなりますが)

以前私は「平均律クラヴィーア曲集」や「インヴェンションとシンフォニア」以外のバッハのチェンバロ曲は、「#系」と「♭系」二種の音律を使い分けた、いわば二刀流じゃないかと思ってたんですよ。
で、そーゆーのがめんどくなったから(笑)、ウェルテンパーな音律にシフトしたんでは・・・とか。
しかし、どうもそうではないようです。
イギリス組曲はバッハの三大組曲の中では最も成立時期が早く(おそらくワイマール時代に原型が成立)、しかも第一番から書き始めたらしいとされています。
その曲が#系の調に最適化した音律でダメってことは、すでにこの時期にもっと均した音律(すなわちそれ一種)で作曲していたとしか考えられません

ではどう均せば良いのか・・・
ここでヒントになるのは、同じ修正ミーントーンでも「♭型」(F#からB♭までの4つが広い五度)は、バッハの♭系の曲に非常に良く適応し、「通常型」共々これらで良好に演奏できる曲がとても多かったことです。
つまり「#型」はバッハが使っていた音律と違いが大きいが、「通常型」と「♭」型はイイ線行ってるんじゃないだろか?
─── と考えると、仮にあと少し純正長三度を減らして音程の偏りを均すとしたら、どうすればよいかおのずと見えてきますね♪
(続く)

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