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ヴェルクマイスターで24調シリーズ始めます

趣味で音律の研究を始めてから、子供の頃ピアノを弾いていた時は決して好きとは言えなかった、シャープやフラットがたくさん付く調に何やら(笑)興味が出てきました。
ロマン派を中心に、変ニ長調や変ホ短調などの曲を打ち込みしているうちに読譜にも慣れたので、ピアノを再開してからは基礎練習を全調タイプにして、楽曲も調号が多いものを結構弾いています。
そこで現代アメリカの「全調もの」教育作品をメインに、ヴェルクマイスターで24の長・短調全ての曲を演奏してみることにしました。

え!?そんな曲集あるんですか?…って、日本でもピアノ学習者に超人気&定番のギロック「叙情小曲集」はその一つ、原題を訳すと「ロマン派様式の叙情的前奏曲集~全ての調による24の小品」となります。
そして日本では出版されていませんが、ギロック同様に(日本の)初級後半~中級程度の技量で弾ける全調曲集が、アメリカにはまだたくさんある↓↓↓んですよ♪

ロバート・D・ヴァンドールPreludes: 24 Original Piano Solos in All Major and Minor Keys」…標題なし、単純な器楽的モチーフから成る前奏曲本来のスタイルが主。中間部分の独特な転調ワザが光る。ブルクミュラー~ソナチネ終了程度まで難易度の幅が広い。

デニス・アレクサンダー24 Character Preludes」…標題あり。難易度的には「抒情小曲集」の次にやるのに適しているが、指定テンポで弾くにはかなり難しい曲も。古典的なものから現代風まで多彩な様式。

メロディ・ボバーIn All Keys: Sharp Keys」「In All Keys: Flat Keys」(2冊で24調+α)…標題あり。新鮮味はないが通俗的で分かりやすい作風。ポピュラー系の曲も混じる。難易度はブルクミュラー中盤~ソナチネ前半程度。(2015年に出たばかりの曲集です)

ヴィクター・ラベンスクPiano Miniatures: 24 Short Solos in All Major and Minor Keys」…標題あり。短く易しい。ポピュラー系の曲も混じる。ブルクミュラー程度で問題なく弾けそう。

この中で私が断トツに気に入っているのが、ヴァンドールの前奏曲集です。
なのでこれをメインに、サブがアレクサンダー、補欠にボバー(彼女は人気ありますが、私には凡庸な作曲家としか思えません)から選曲して、ギロックも少しは混ぜるかも?と予定しています。
ほんとはヴァンドールのを全曲弾けばいいんですけど、現在の私の技量ではノーミス演奏できるかビミョーなのが2曲ほどあるので。
それからオマケとして現代作品ではありませんが、グルリットの「24の調による練習曲」も少し入れようかなと思っています。

曲の書法によって音律の長所や欠点の出方が違うので、一つの調につき2曲ずつ…となると48曲!ですか、ちょっと多いですね。
あまり解説の必要がない調は1曲にするかも(笑)。
このシリーズとは関係ない曲も多少は弾きたいし、まあ気長にやることにします。
なお条件を揃えるために、演奏記録時の電子ピアノの音色は「ブライト」、アンビエンス(空間残響)は7に固定します。
ということで、次回から♪(^ ^)
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変イ長調とヴェルクマイスターの微妙な関係

変イ長調の曲で、ヴェルクマイスターと平均律を弾き比べてみました。
ネタにしたのはキャサリン・ロリンの「Sweet Elegy」(楽譜はこちらに収録)で、転調なし&変イ長調の音階構成音以外はG♭音が数回出てくるだけの単純な作りです。
(その割には良い曲だと思いますが)

◆ヴェルクマイスター


◆平均律




変イ長調の音階構成音は、五度圏図でD♭から時計回りにGまでとなり、ヴェルクマイスターにとっては純正五度が多いかわりに長三度がかなり広いほぼ裏領域です。
一方平均律はどこも同じ(笑)、変イ長調だからって特に何がどうということはありません。

この曲は「分散」してない同時打鍵の和音が左手に多く、ヴェルクマイスターで練習しながら「ちょっと和音の響きが硬いなあ…」と思っていました。
良く言えば、純正五度のおかげかスッキリしてるのですが、どうも音相互の馴染みが悪いんですね。
ただ伴奏に対して旋律が浮き出る効果はあり、それを優先するなら悪くはないなという感じ。
平均律は響きが曇って旋律も少し沈むとはいえ、全体的なまとまりが良い印象です。

まあどっちもどっちと言うか、こういう曲で和音も旋律も立てるのは、音が固定されている鍵盤楽器にはツライ、というのが正直なところ。
そこでどうせなら「ほぼ裏」のヴェルクマイスターとかでなく、ピタゴラス律にしてみようと思ったんです。
使用音が少ない曲だし、関係ない場所(例えばD-A)にウルフを回せば、不都合なく演奏できるだろうと。
ところがそうは上手く行かなかったんですね、それはこの部分です↓


赤枠で囲った、係留和音中の四分音符・A♭音がG音(青丸)になって解決する動き、これが曲中何度も出てくるのですが、ピタゴラス律ではG音が前拍の二分音符・E♭音に対して高すぎ、解決したように聴こえません!
解決音は、アクセントを付ける係留和音から自然に移行する感じで軽く添えるのですが、それだけに音程が悪いとどうにも落ち着かない…上手くごまかせないかと演奏で工夫しても、納得行くようにできませんでした。

この曲はヴェルクマイスターだってほとんど裏だったのに、ピタゴラス律と何が違ったの?と思い、五度圏図で考えてみました。
ヴェルクマイスターはC-Gが純正より約6セント狭いので、E♭-Gの長三度もピタゴラス律より6セント狭くなっています。
これでもまだ純正長三度よりずっと広いのですが、ピタゴラス律より6セント改善されただけで、随分と音程の落ち着きが違うのです。

いや~~、端っこ(笑)のC-Gだけど -6セント入ってて良かった~~!と思いました、ここは変イ長調の属和音が関係するので重要なんですね。
何を隠そう私は係留フェチ(笑)で、曲中一番気に入っていてしかも何度も出てくる部分がダメになる音律では、使う気になれません。
数セントの違いでも、場合によっては決定的になることもあるんだなと思い知った次第です。

なお平均律では、E♭-Gの間で合計8セント分ピタゴラス長三度より狭くなっているので、係留和音の「解決感」はヴェルクマイスターの同一箇所より、約2セント良くなっています。
ただこの点に関しては、(少なくとも私は)両者にそれほど大きな違いを感じませんでした。
では逆に、ピタゴラス長三度より4セント狭い…だったらどうなのか?2セントでは?
係留和音が解決して聴こえる長三度の広さをどこまで許容できるか、可否の境界線を探ったら面白いと思いますね。

ヴェルクマイスターの表と裏

不等分律で、長三度の純正からのズレが比較的少ない領域を、ズレが大きい領域をと言うことがあります。
学問的な用語ではなく、あくまで俗な表現ですが。
では聴感上、表と裏でどれくらい違うのか、体験に格好のサンプル曲を見つけたので、ヴェルクマイスターで演奏してみました。

キャサリン・ロリン「Pure Heart」…★楽譜はこちらの曲集に収録


(音量が小さいと違いが分かり難いです、ヘッドホン推奨)

16小節の主題が、多少伴奏を変えただけで4回繰り返され、最後に短いコーダがつく単純な曲ですが、ハ長調で始まり3回目(画像でオレンジ色の花がアップになる部分)で半音上の変ニ長調に転調、その後またハ長調に戻ります。
(コーダ以外の部分では、臨時記号もごくわずか)
五度圏図で分かるように、調号無しのハ長調とフラットが5つも付く変ニ長調では、音階構成音の領域がほとんど反対になります。↓



つまりこの「Pure Heart」では転調時に、ヴェルクマイスターの表から裏そしてまた表へと変わる様子が聴けるんですね。
曲中変ニ長調の部分は変ハ音(=ロ音)が2回鳴る以外は音階内の音しか使ってないため、ほぼピタゴラス律(長三度がバカ広い)で鳴っており、狭い五度が多いけれど長三度は割と良いハ長調とは真逆状態です。
ヴェルクマイスターで最も響きが異なる2調間での転調、聴いてみてどんな印象でしょうか?

何が違うの?って人から、ボロクソに言われている平均律よりもさらに長三度が劣化している変ニ長調が音痴で耐えられない人、いやこれが有名なあの調性感ってやつでしょ、なるほど…と頷く人まで色々だと思います。
(あくまでこの曲限定ですが)私は弾いていて、変ニ長調がこの程度の崩れ?なら許容範囲内というか、むしろ気分が変わって面白いと思いました。
ちょっと遠い所に来た感じ…と言えばいいでしょうか。
主題を4回繰り返す内、3回目がコレ(笑)って、出番としてはナイスタイミングです。
その後また安定したハ長調に戻って終わるので、問題ありません。

ただこの曲は平均律のピアノで作ったのでしょうから、本来は転調しても音律による響きの変化などは無く、音程関係が全く同じまま半音上下するだけのはず。
平均律でも弾いてみましたが、ヴェルクマイスターに比べ正直言って退屈でした。
主題はなかなか清純な魅力があっても、構成的には駄曲と言われてもしょうがないでしょうねえ。
時々こういう安易な曲があるんですよね、キャサリン・ロリンは…売れっ子で忙しいせいかもしれませんが…(^ ^;)

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