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ショパン~ワルツホ短調・遺作

ショパンのワルツホ短調(遺作)を、キルンベルガー第一法で演奏してみました。



中間部分、画像が緑になるところは調号がシャープ4つのホ長調です。

ホ短調が和声的短音階ならD⇒D#になるので、第一法のD-Aウルフを踏みにくく、またE-GやA-Cの純正短三度が利用できるので第一法に向いていることは、以前こちらのシューマン「最初の損失」の記事に書きました。
しかし長い曲だと転調したくなるので、その場合は平行長調のト長調よりも、同名長調のホ長調の方がD-Aを使わずに済むので安全です。
このショパンのワルツは正にそれなんですね。
前回の「猫のワルツ」同様、ショパンの調号の少ない曲でキルンベルガー第一法で良好に弾ける代表的な曲でしょう。

序奏の後に出るメランコリックな主題です。↓


(クリックで大きくなります)

D#になってますね!
また最初の4小節は、旋律中のA音にも#がついています‥‥‥耳が音程に敏感な中音域では、第一法のA音が旋律的に低く聴こえることがありますが、このような主題なら心配無用です。

ところが、21秒~と49秒~から始まる旋律には、A音がたくさん出てきます。



ここはよぉぉぉ~~~く聴いていると、A音が少し低いのが分かるんですね。
しかし半音階的な旋律と和声のせいで耳が撹乱されているのか、決定的な不具合には聴こえません。
ここは曲中最も不安定な個所ですが、前後を「f」に挟まれてここだけ「p」なので、危ない音程も弱音で目立たず過ぎてしまいます。

中間部分、第一法のホ長調は長三度が広いので明るく、短調部分と好対照をなしています。
そしてまたホ短調に戻り、三度や五度の純正和音がたくさん使われているコーダでは、クッキリと透明感のある響きが美しいです。
ペダル踏みっぱなしの分散和音↓ (ホ短調のEGBが純正)



この曲は平均律だと全体に曇ってしまいます。
また第二法は狭いA-Eに抵触する個所がいくつかあり、向いていません ──── 第一法がベスト音律ですね。
本当にショパンが第一法で書いたのかは微妙なところですが、「猫のワルツ」と共にこの曲も第一法のデモ曲として最適だと思います。
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猫のワルツが第一法で弾けるワケ

音階内にD・A音が含まれるヘ長調の、ショパン~猫のワルツ(Op.34-3)がキルンベルガー第一法で良好に弾けるのは何故か?その解答編です。
今度は楽譜付き動画にしてみました↓


★右下の「YouTubeで見る」ボタンをクリックすると、大きくして見れます

まずこの曲は非常に速く演奏されるので、ワルツの伴奏2・3拍目の和音でD・Aが同時打鍵されてもほとんど分かりません。
このような個所が何度かあるんですが‥‥‥↓気づきませんよね?


しかも序奏の後に出てくる主題は、一度もDとAが隣り合っていません。↓


こちらの記事のシューマンでは、DとAが隣り合うフレーズが繰り返され、微妙でした。

ただしこの主題もあまりノロノロ演奏すると、何となく不安定に聴こえるので注意が必要です。

ヘ長調の曲は五度上の属調・ハ長調に転調するのが最も簡単&ありがちですが、この曲は下属調の変ロ長調で二つ目の主題が出ます。
さらに中間部分では変ニ長調になり、最初のヘ長調に戻って来る ──── つまり五度圏を時計と逆回りに転調し、ハ長調など第一法的に危ない方へは行かないのです。

しかしコーダでとんでもない個所があるんですね! ここです↓


最も音程の狂いが目立ちやすい音域のD-A空五度が左手に‥‥!!!!
このD-Aは第二法でも微妙で、普通は第一法なら文句なしにアウトです。
ところが何故かOKなんですね!この部分だけ、ゆっくり演奏してみました。↓


テンポが遅い上に楽譜に印をつけ「ここが危ないですよ」と言われれば、確かに少し変な響きがしています。(笑)
でも何も言われなければ、普通は旋律の方に気を取られていることもあり、22セントも狭い「使えない五度」が鳴っているようには聴こえません。
それは何故なのか? 同時にE音(D音と1オクターブ+長二度)が鳴っているから…では理由として弱いです。

考えてみるに、このD-Aはここでニ長/短調の主和音だとかト長調の属和音などとして使われてはいないからだと思うんですよ。
dim. 記号からのニ小節、右手は臨時記号が多い半音階的なフレーズです。
ここは調性が明確ではありません ──── たぶんそれが D-A の不正音程が目立たない一番の理由ではないでしょうか。

このテクニック(笑)、良く覚えておいて下さいね。
これからもショパンでたくさん出てきます。

この曲のヘ長調部分は白鍵の使用が多く、第一法の純正音程が多く聴かれます。
そしてペダル踏みっぱなしの最後の9小節は、何と!前打音も含めて使われている全ての音が第一法で純正音程の関係になっています!
つまり第一法ならとても美しく響くわけですね。
総じてこの「猫のワルツ」は、第一法はこう使え!的なデモ曲の好例だと思います。

ショパンをめぐる音律ミステリー

ショパンの作品34-3 通称「猫のワルツ」ヘ長調を、可愛い猫の写真付きでどうぞ。



しばらくショパン・ネタで行きたいと思っています。
ショパンは平均律ピアノの世界でも圧倒的な人気と評価で、実際、平均律で弾いても彼の音楽の基本的な魅力(甘美な旋律や華やかな演奏効果)は、そこそこ発揮されていると思います。
(⇒ だから人気なんですね)
なので古典調律で「救ってあげる」要素は少ないとも言えるし、古典調律ってバロックやせいぜい古典派までが守備範囲じゃないの?と思っている人も多いでしょう。
ですが一見(聴?)平均律と相性の良いショパンが、実はガチガチの古典調律で作曲していた可能性もあるのです。
それはコレですね(笑)↓↓↓



ネットでは有名?な、ショパンにはキルンベルガー第一法が「合う」曲が多いという説、私も実際に色々と鳴らして確かめてみました。
すると以下のように、通称などがある有名曲だけでも適合曲がゾロゾロあるんですね。

「華麗なる大円舞曲」「小犬のワルツ」「別れのワルツ」(ワルツは一部を除きほぼ第一法が適合)「幻想即興曲」「英雄ポロネーズ」「黒鍵」「葬送行進曲」「別れの曲」「エオリアンハープ」「大洋」・・・・・・

ショパンは黒鍵の多い調を好んだために、偶然D-Aを使わずに済んでいるとも思えますが(バッハの「平均律クラヴィーア曲集」でも、黒鍵の多い調は第一法で「弾ける」ものが珍しくない)、それにしても有意味に多い気がします。
しかも上の適合曲の中には、しっかりD-Aを使っているものがあるんですよ。
使っているのに分からないんです!
第一法のD-Aは第二法と比べてはっきりと狭いので、簡単にはごまかせないはずなのに、ショパンを調べて「こんな裏技があったか!」と驚きの連続。
これが偶然としたら、ちょっと出来過ぎの感じがします。

しかし一方で ────

★一法はもちろん、二法でもボロボロ⇒「軍隊ポロネーズ」(イ長調)、エチュード「木枯らし」(イ短調)、マズルカ23番(ニ長調)
★一法はもちろん、二法でも微妙⇒「前奏曲集」(全調24曲を通し演奏するとして)
★一法がダメなので二法にすると一応不具合は解消するが、何となく「これでいいのかなぁ・・・」と感じる曲の存在⇒ワルツ作品34-2(イ短調)、ノクターン作品9-2など多数?
★お願いだからD-Aをフォルテで連打しないで!⇒マズルカ作品68-3(ヘ長調)

─── な曲もあり、まあ「色々な音律使ってたんだヨ」という一言で片付けてしまえば簡単ですが、依然としてミステリーな要素もたくさん残っています。
(ショパンの頃のピアノはまだ現在のように堅牢ではなく、調律の持ちも悪かったので、時々音律を変えていたとしても不自然ではありません)
一法でない時は二法ではなく、全く別系統の音律だった可能性もあり、何と!ショパン向けと言われる音律を考案した有名数学者までいます。
さすがにピアノ曲だけで一流作曲家の仲間入りをしているショパン、音律の話題にも事欠きませんね。

ところで上掲の「猫のワルツ」、音階内にDとAが含まれるヘ長調で、実は何度もD・Aを同時打鍵してるんです・・・え!?猫に気を取られて気づかなかった?
目をつぶって聴いても、たぶんどこなのか分からないと思います。
その秘密は次回で・・・

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