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これはやっぱり平均律…の曲

ティリエ「プランテーション・ソング」の例と比較するために、同じく20世紀に作曲されたハ長調のピアノ曲を聴いてみます。
大人も子供も、ピアノ初心者に大人気のギロック(1917-1993)の仲間(愛弟子?)、キャサリン・ロリン「ピアノ de プレリュード」(全音楽譜出版社)から、「プレリュード ハ長調」。
この曲も特に音律探偵のためではなく、気楽に弾けそうだなと思い楽譜を買ってきて、その中で特に簡単そうなのをサラッと練習したけだったのですが…

電子ピアノをキルンベルガー(第3法)にしてるので、まずはそれで↓↓↓



この曲は、4声体の上声部が旋律だった「プランテーション・ソング」とは違い、右手=旋律、左手=伴奏の書法です。
(従って、こちらの方がはるかに演奏が易しい)
単純な旋律ながら、そこに付けられている和音(和声)がちょっとオシャレなのは両者共通の魅力です。
中間部分でちょっと短調になるところも似てますね。
どうですか、キルンベルガーでも特に問題はなさそうですが。

では平均律で聴いてみましょう。「プランテーション・ソング」はここでボロボロになったんですけど…



ん…?? どこが違うんだろ?ほとんど差が無い?…でも、よぉ~~~く聴いていると、冒頭旋律「ミ~レド・ソ~~、ミ~レド・ソ~~」や、少し後の「ミ~~シ~ドレ~~ラ~~シド~~~」で、重要な「ミ」の音が平均律はバスの「ド」から少し浮いています(長三度が広いのだから当然です)。
また、キルンベルガーの方は、「ミ~レド・ソ~~」の「ソ」がやや上がり切らない(五度が狭いのだから当然です)。

聴いているだけなら大差ないかもしれませんが、交互に両方の音律で弾き比べてみると、平均律の方が伴奏に対して旋律が際立つ上に、響きが繊細で(キルンベルガーは音がしっかりするが、やや無骨で堅い)ムードたっぷりに演奏できるんですね(笑)。
キモチの高揚感が微妙に違うんですよ────「合っている」音律の方が、良い演奏ができるんです!
(なので電子ピアノを平均律にして演奏を記録し、キルンベルガーの音源は後でオーディオファイルに変換する際の処理で作成しました)

同じ「ドとミ」でも「プランテーション・ソング」は、和音で進行する音楽の上声部が旋律だったため、純正から大きく外れる平均律では聴き苦しかったのに、逆にこのプレリュードでは伴奏に対して旋律が鮮やかに浮き出るプラス効果となった点、これは曲の書法と音律の相性を考える上で興味深いことです。

さらに「ミ~レド・ソ~~」の冒頭旋律、これが非常に上手いと思いましたね~!
「長三度が広すぎ&五度がわずかに狭い」平均律は、モーツァルトのピアノソナタK545第1楽章冒頭のように「ド⇒ミ⇒ソ」という順で音を並べると、バランスが悪く間抜けに聴こえてしまいます。
しかし、ミからレを経由してドに下がり、そこからソに上がればこの欠点は殆ど目立ちません。
実際にピアノを弾きながらピアノ曲を作曲していれば、音律の理屈など知らなくても、その響きや音程を聴いて自然に「良い」音の選択・配置をするのが当然のはず。
(それくらい繊細な耳でなければ、作曲家なんてやっていられない)
だからこの曲を調べて、キャサリン・ロリンのピアノは間違いなく平均律だと思いましたね。

…するとやはりティリエの「プランテーション・ソング」は、平均律でないピアノで作曲されたに違いない────となるわけです!
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もしかしてあの音律だったのかも?

前回からの続きです。
実はこの曲たった28小節、2分もかからない小品ながら、長三度のC音とE音(ハ長調のドとミ)の同時打鍵が52回もあるのです!
しかも耳が音程に敏感な中音域に音が固まっているので、平均律だと長三度の狂いが非常に目立つんですね。
これじゃまるで、平均律の欠点をデモンストレーションする曲みたいじゃないですか!
作曲家というのは、非常に耳の良い人達です。
だから「プランテーション・ソング」が平均律のピアノで作曲されたとはとても思えませんでした。

キルンベルガー第3法ならC-Eが純正なので、ピッタリ来るのはある意味当然なんですが、20世紀半ばのピアノに使われていたとは考えにくいし…
……あ、でもあの音律なら可能性あるかも!
そうです、ヴェルクマイスターです!試してみました↓↓↓



キルンベルガーより良いとまでは言えませんが、平均律よりはずっと旋律も和音も安定していて、十分美しく聴こえますね。
ヴェルクマイスターはC-Eの長三度が純正より約4セント広いので、「ミ・ミ・ミド~♪」の「ミ」がごくわずかドに対して上ずっています。
でも平均律の酷いハズレ具合と比べれば、完全に許容範囲ではないでしょうか?

ヨーロッパでは、ウェル・テンペラメント(ウルフがなく全調の演奏が可能な不等分律)と平均律(ピタゴラスコンマを全ての五度に等分)が混同されていた(今でもされている?)経緯があり、平均律と称して不等分律の元祖であるヴェルクマイスター音律の調律手順がかなり広く普及していたそうです。
モーリス・ティリエのピアノがヴェルクマイスターだったのなら、この「プランテーション・ソング」の書き方は、十分に納得行くものです。
ピアノの保守は調律師任せで、作曲家が音律について全く知識がなかったとしても、実際に弾きながら作曲していれば、その音律にとって「良い」(少なくとも「悪くない」)音の置き方になるはずですから。

この曲と同時期に作曲されたティリエの他のピアノ曲(もしあれば)も調べてみないと確実なことは言えませんが、ヴェルクマイスターだった可能性はかなり高いと思います。
ですが比べてみると、キルンベルガーの方が何となく心地良いです…「C-E」の純正音程が効いてるんでしょう、第3法にたった1つ残っている純正長三度がこんなに生きる曲も珍しいのでは?
もし「キルンベルガー第3法・作曲コンテスト」なるものがあれば、そのピアノ小品部門(2分以内)で最優秀賞を取るのは間違いありませんね(笑)。

楽譜を見る限り第1法や第2法ではダメそうだし、一般的な古典調律の中では、キルンベルガー第3法がこの曲のベスト音律と考えていいと思います。
電子ピアノを買い、とりあえずキルンベルガー(第3法)がデフォルトになるよう設定して、たまたま練習したピアノ再開後初めての楽曲が、それとピッタリだった…って、話が出来過ぎてて何か怖いなあ…(^ ^;)

平均律で音痴になる20世紀のピアノ曲

ピアノ再開して、練習曲などでリハビリしながら簡単に弾ける曲ないかな?ということで、全音から出ている「カイエ・ドゥ・ルモアンヌ2~20のやさしい現代フランスピアノ作品」という楽譜を買ってきました。
初級後半(ブルクミュラー程度)の難易度でしょうか。

各曲、譜ヅラを見て良さそうなものをサラッと弾いてみたら、さっそく気に入ったのは「天井桟敷の人々」などの映画音楽で有名なモーリス・ティリエ(1906-1972)が1948年に作った「プランテーション・ソング」という曲。
練習してみると、見た目ほど簡単ではないことが分かり(この作品集はその手の曲が多いのに後で気づくなど)、思いの外仕上がるのに時間がかかってしまいましたが、前記事にも書いたように音律をキルンベルガー(第3法)にしている電子ピアノではこんな感じです。↓


◆著作権が生きてるので楽譜は出せません。自演の音源は、外国曲の場合Youtubeを通してもダメな場合があるようなんですが、個別に判断できないので文句言われなければいいかな?ということにしておきます。
(それより著作権がとうに切れている古いクラシック音楽の打ち込みをアップすると、既製CDのコピーと誤認判定されるのを何とかして欲しいです────もう何回「異議申立て」を送信したか分からず)

ハ長調、右手2声・左手2声の4声体です。実際は、和音が並んでいてその上声部が旋律と感じるかもしれません。
音律の制約を受ける鍵盤楽器があまり得意でない書法なのに、キルンベルガーなかなか良いではありませんか。
しかし20世紀半ばの曲なんだから、これはもう平均律作曲であろう、その方がもっと良いのではと思い、音律を切り替えて弾いてみると…!

あまりの酷さに耐え難く、途中で手が止まってしまいました!!!

ではこれが問題の平均律です↓


◆SMF(スタンダードMIDIファイル)で記録した演奏をオーディオ変換する際、再生する楽器の音律設定を変えることで、同じ演奏を複数の異なる音律でオーディオファイルにできる仕組みを利用しています。従って演奏はキルンベルガーのものと同じで、音律だけが違います。

最初は、数週間キルンベルガーで練習していて突然平均律にしたから音痴ピアノに聴こえたのかな?と思いました。
しかし何度聴いても違和感がぬぐえません───ツイッターではいきなりこれを聴いて「キモチワルーイ」と言った方もいました。

冒頭から響きが不安定な上、旋律の山場、ミ・ミ・ミド~♪の「ミ」が完全にハズレていて、長三度が広すぎる平均律の欠点が露呈しています。
(キルンベルガーでは「ド-ミ」は純正)
さらにその前のド~ド~レファ~ラ・ド~ラ~レ~♪という旋律(ここ大好きなんですが)も、どことなく音程が決まらず変ですね。
その後まあまあの短調部分を経て、冒頭テーマが戻ってくると、またミ・ミ・ミド~♪が…(苦笑)
特に1分31秒過ぎの部分はフォルテシモなので、弱音でごまかすとかできません、一番いい所で盛大にハズレるとは…!!!

ミーントーン時代に作曲されたチェンバロ曲ならともかく、こんなに平均律でボロボロになる20世紀のピアノ曲なんて今まで出会ったことないです。
(古典調律が合う現代曲もたくさん見つけましたが、それらだって平均律で一応OKだったんですから)

・平均律慣れしてしまえばこれでも構わないのか?
・ピアノを使わない脳内作曲だったのか?
・ティリエ氏は作曲家としてあり得ないくらい耳が鈍感だったのか?
・ティリエ氏のピアノはキルンベルガーだったとか?

……どれもスッキリしないなあ…(-_-)
音律探偵のためにこの曲を練習したわけでもないのに、さっそくミステリーに遭遇してしまいました。(これはもう性分というものでしょう)
そこで数日頭をひねっていると、もしかして!?と頭に浮かんだことが…!
────次回に続く♪

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