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ギターとリュートの音色で音律聴き比べ

ショパンをやっている途中ですが、キルンベルガー第一法つながりで色々調べていて、面白い実験をしたので記事にします。

ネタ曲はステファン・へラー(1813~1888)の作品119-2 前奏曲ハ長調。
IMSLPで見つけた楽譜はこちら↓ (クリックで大きくなります)



D・Aの同時打鍵なし、近接使用は1箇所のみで、キルンベルガー第一法で演奏可能、しかもウルフをC#-A♭にしたAs型ミーントーンでも大丈夫です。
しかしざっと打ち込みして聴いているうちに「ピアノ曲としては平板で地味だなあ、ギターなら丁度いいくらいだけど」と感じたので、音色を変えギター演奏風に編集してみました。
自分で演奏したことのない楽器をそれっぽく打ち込むのは難しいのですが、まあギターやってない人なら騙せる?程度には仕上がってると思います。
実際に弾いている人には突っ込まれる所があるかもしれませんけど。

ミーントーン、キルンベルガー第一法、平均律の順で鳴らしています。
(ギター曲として不自然な音をオクターブ移高したり、終結部分など多少アレンジした部分があります)



ついでにリュートもやってみました。
音源に「リュート」の音色がないので、リュートの元になった中東の楽器「ウード」を(リュートは複弦なので)2チャンネル重ねました。
低音が少し違うような気がしますが、聴いた感じはほぼリュートなので代用として差し支えないと思います。
これもミーントーン、キルンベルガー第一法、平均律の順です。



★どちらもある程度大きな音量か、ヘッドホン等でお聴きください

どうでしょうか…?  私の印象は ────

1、ギターよりリュートの方が音律の違いが良く分かる
2、ギターの平均律はまあ我慢できるが、リュートは酷い(聴いていられない)
3、19世紀の曲なのに、リュート+ミーントーンだと古楽っぽく聴こえる
4、ミーントーン、中間部分で低音のB♭・A♭の音程がイマイチ(特にギターで気になる)
5、五度は捨てている(笑)ミーントーンだが大いに健闘!

1は何故なんでしょうねえ?
使用音源は、実際の楽器の音色をサンプリングしたものではなく、波形をデジタル的に合成するタイプだと思うんですが…
2とも関係しますが、ギターは平均律で聴きなれているため、耳が不正音程に鈍感なのかもしれません。
平均律の響きも込みでその楽器のイメージができてるってことですね。(これはピアノも同様)
私はリュートのCDもたくさん持っていますが、やはりそれらは平均律よりマシな音律だから、「平均律リュート」に違和感があるんでしょう。
なので、プロのリュート演奏をほとんど聴いたことがなければ、「1」のように感じない人もいると思います。

4は、キルンベルガー第一法で鳴らしながら演奏を編集したせいもあります。
ミーントーンだったら、もう少し目立たないようにしたでしょう。
リュートの方であまり気にならないのは、音色によって音域による音量バランスが違うせいかと思います。

純正音程の割合で言えば、この曲では圧倒的にキルンベルガー第一法が優れていますが、長三度しか合っていないミーントーンが意外といいのは、本当に不思議ですね。
五度が5セント以上狭いっていうのは、かなり厳しいはずなんですけど・・・
独特の古風で親密な響きは、むしろこちらを好む人もいるかと思います。
鍵盤で「操作」しているとはいえ、チェンバロもギターやリュートと同じく弦をはじいて音を出すので、ミーントーンは撥弦楽器と相性がいいのかもしれません。
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平均律じゃないとダメな曲?

以前現代日本人作曲家のピアノ小品に古典調律を試したら、意外と上手く適合して興味深く思っていましたが、中にはど~しても平均律(またはそれに近い音律)じゃないとダメな曲も存在します。
え?それってどんな曲かって・・・例えばこういう曲です↓↓↓



矢代秋雄さんの1963年作品です ──── 拍子抜けするほど古典的で、初心者でも弾ける簡単な曲なのに(昔愛奏してました)、一体どこが古典調律にとって問題なのか?
困ったその1:最初から最後までイ長調である
困ったその2:旋律と和音の両方に美しさが要求される
困ったその3:テンポが遅く音の数が少ない(のでゴマカシがきかない)

イ長調はキルンベルガー音律の苦手な調で、第一法はボロボロ、二法はヨレヨレ、三法では大きく改善し旋律は良くなっても、要所で和音が汚く「合格」にはちょっと厳しい感じです。
私はイ長調が比較的得意なヴェルクマイスターに期待してましたが、A音が低く聴こえてしまい旋律がイマイチ。
(A音はヴェルクマイスターで相対的に最も低い音で、通常これは問題になるほどの低さではありませんが、この曲とは相性が悪いということです)

ミーントーンとピタゴラス律はどちらもウルフの位置決めはラクですが、前者は旋律が後者は和音が悪くてちょっと使えません。
ヤング、ヴァロッティは目立った不具合はなくとも、平均律より良いか?というと疑問で、専用音律でも作るのでなければ、平均律が一番「適合」する曲なんですね。

ところで、いつも適合した音律での音源ばかりだと、どれも違和感なく聴こえて「古典調律って平均律とどこが違うのか?」「音律の差なんてあまりに微妙で、実際はどーでもいいことなんじゃないか」と思う方もいるかもしれない?ので、今回はこの「おすまし」を例に、適合しない例を紹介します。

【キルンベルガー第一法】↓↓↓



この音律でベートーヴェンの「熱情」が演奏できるのに、信じられますか?この壊滅的(笑)な状況・・・
イ長調下属和音の五度D-Aが音律の狭い五度に当たる一方、A-C#(D♭)の長三度は広すぎるなど、音律の弱点に何度も抵触している結果です。
これが平均律と同じに聴こえる人はいませんね ──── それくらい音の割り振り方が違うのです。

【ミーントーン】↓↓↓



曲中 D#とE#があるので、それらの音が揃うようウルフを動かしたんですが ────
冒頭の、E⇒F#⇒G#⇒A (移動ドなら「ソ~ラシド」)と音階を上っていく旋律は、G#が低く感じてしまいます。
このG#はEに対して純正長三度で、その意味では「正しい音程」ですが、この旋律には純正よりも広い長三度の方が向いてるのです。
もし矢代さんのピアノがミーントーンだったら、この旋律は生まれなかったはず。
逆にミーントーンの時代には、それでも音痴にならないように曲が書かれていました。
つまり音律が違えば、出来上がる曲も違うのです!

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