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キルンベルガーとヴェルクマイスター、どっちが良い?

アメリカの作曲家&編曲家、ランドール・ハートセルのピアノ曲集「Portraits of the Sky」から「Toward the Rising Sun」を弾いてみました。
この曲はハ長調で臨時記号が一切ありません ─── つまり白鍵だけです。



電子ピアノを買った当初は、電源を入れるとキルンベルガー(第3法)になるよう設定して弾いていましたが、その後それをヴェルクマイスターに変更し、色々な曲を弾いて使い心地を比べていました。
ここでいきなり結論…常用の不等分律としては、キルンベルガーよりもヴェルクマイスターの方が快適です!
何だかんだ言って有名な音律だけあると思いました。

どちらの音律も、純正よりかなり狭い五度が4つ(キルンベルガーの純正より約2セント狭い五度はここでは無視)あり、低音域ではボヨ~~~ンと鈍く、中音域では音がバラけるし、強打すれば唸りが酷いなど、演奏しながら聴いていてかなり不快です。
ここで2つの音律はどこが大きく違うのか見てみると ─── キルンベルガーは狭い五度が五度圏で4つ連続で並んでいるのに、ヴェルクマイスターは1つだけ離れていますね…



全部で6つある白鍵同士の五度のうち、狭い五度はヴェルクマイスターが3つ(つまり半分で済んでいる)なのに、キルンベルガーは4つもあり、調号が少なく白鍵が多い曲では狭い五度の不快さを味わう頻度が多くなります。
キルンベルガーは純正長三度があるとはいえ、 C-E のたった1つだけでは(ミーントーンと違って)狭い五度のカバー効果に乏しいんですよ。
白鍵が多い曲なんてほとんど弾かない、変ニ長調や嬰ト短調みたいのばっかりだなんて人ならともかく、一般的には常用の不等分律ならヴェルクマイスターの方が快適に使えるだろう、というのが私の率直な感想です。
(もちろん個別に考えるなら、キルンベルガーの方が向いている曲もありますが)

さて「Toward the Rising Sun」は中間部分を除き、和音の跳躍によるモチーフで書かれています。
使用和音はフレーズの末尾以外はコードネームで言うマイナーセブンスとメジャーセブンスで、例えば「Cmaj7」なら構成音の「C・E・G・B」を左手「C・G」右手「E・B」と2つの五度に分けて弾き、オクターブ跳躍を繰り返します。
(平行五度だらけなんですが良いのでしょうか???)

他にも曲中の「Dm7」「Em7」「Fmaj7」をそれぞれこの要領で2つの五度に分けると、キルンベルガーでは必ず純正五度と狭い五度が組むことになります。
ですがさらにヴェルクマイスターでは「Fmaj7」の時、左手「F・C」右手「A・E」で両手とも純正五度になるんですね。
録音を聴くと、1小節丸々「Fmaj7」の部分は、だんぜん透明感のあるクッキリした響きです!

ただ演奏に際しては、純正五度と狭い五度では鳴り方が違うので、和音をイメージ通りに響かせるためのタッチ・コントロールが難しかったです。
(まだうまく行ってない箇所があちこち)
この曲は平均律だと全体にドンヨリ(笑)して角が取れ、和音の響きも均質化されますが、ヴェルクマイスターに慣れた耳には何とも凡庸に感じるだけでしたねえ…。
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音の少ない曲でピタゴラス律を使ってみる

ピアノを再開してから、現代アメリカの「教育作品」にハマっています。
これはピアノを習い始めた人が、いわゆる大作曲家の名曲(難易度的に中級後半~上級レベル)に手を出せるようになるまでの間、その予備練習となるような教育的配慮のもとに書かれた小品を指します。
日本でもピアノ学習者に大人気のギロックはその先駆的作曲家で、彼は1993年に亡くなりましたが、アメリカにはまだまだそのような人達が大勢いて、ちょっと粗製乱造気味では?と思うくらい膨大な数の教育作品が出版されています。
(それらのうち日本で紹介されているのは、ごくわずかでしかありません)

楽譜を買いあさって色々と弾いてみると、別にそのつもりで曲を選んでるわけじゃなくても、電子ピアノにプリセットされているバリバリの(笑)古典調律が似合うものが結構見つかります。
今回は使われている音が少ない曲に注目してみました。
まずはジーナイン・イェーガーの「Jade Garden」(翡翠色の庭)、楽譜はこちらで購入できます(サンプルで譜面が一部見れます)。



この曲はフラットが6つも付く変ト長調で、動画最後の五度圏図で緑色の6つの音しか使っていません。
階名で言うと、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラだけで「シ」が無いんですね。
右手は全て黒鍵、左手も2度変ハ音(=ロ音)が出てくる以外は全て黒鍵を弾きます。

空5度がたくさん使用されている一方、長三度が重要になる部分はほとんど無いので、ウルフを関係ない場所に置いたピタゴラス律にしてみました。
平均律よりもピアノの響きが硬質&透明になり、「ウォーターカラー・インプレッションズ」というこの曲が含まれる作品集の趣旨にも合うと思います。
ピタゴラス律では、主音を嬰ヘ音に指定するとD-Aにウルフが来ます(電子ピアノのメーカーや機種によって違うかもしれませんが)。

しかし音が6つで驚いてはいけません、たった5つ…の曲がありました。
今度は嬰ヘ長調 ─── 変ト長調の異名同音調なので、さっきと似たようなものですけど。
ではキャサリン・ロリンが古今の名画からインスピレーションを得たカラー図版付き曲集「Museum Masterpieces Book 3」から、ゴッホの「オーヴェルのオワーズ川の川岸」をどうぞ。



さざ波立つ川面に陽光がきらめく様子を描写したのでしょう、これもピタゴラス律がピッタリで、水の透明度がグッと増す感じです。
嬰ヘ長調で音が5つとなれば────そうです、こちらはもう完全に黒鍵しか弾きません
最初から5音で作曲しようと計画し、そのために嬰ヘ長調にしたのだと推測されます(その方が弾きやすい)。
階名では何と!日本のヨナ抜き音階と同じド・レ・ミ・ソ・ラになり、そう言われてみるとどことなく和風にも聴こえる、不思議な「ナンチャッテ印象派」曲ですね。

どちらの曲も平均律のピアノで作曲されてるはずですが、楽譜に音律が指定されているわけではないし、曲を適切に解釈した上で狙った効果が出せるなら、古典調律を使うのも大いにアリだと思います。
そもそも純正音程が多く鳴っていると、弾いていて気持ちが良い ─── 練習が進むんですよ。
簡単に音律変更できる電子ピアノの長所、大いに利用しましょう!

ヴェルクマイスターで C.P.E.バッハ「カロライン」

電子ピアノのフォルテピアノ音に相応しい曲…ということで、エマヌエル・バッハの「カロライン」を弾いてみました。
フランス・バロックにもよくあった、人物のポートレイト小品です。
3種類あるフォルテピアノ音のうち、一番柔らかく曇っている「メロウ」が曲のイメージにピッタリだったのでそれを使い、アンビエンスも多目にかけています。
音律はヴェルクマイスター、ピッチも現代より少し下げて、A=432Hz(←数値に深い意味はありません)にしてみました。



手稿譜の見づらいものしかIMSLPになかったので、楽譜付きにしませんでしたが、こちらの動画で楽譜が見れます
(私が使ったヤマハ・ミュージックメディア「バロック小品集2」の楽譜とは、装飾音やフレージング等がだいぶ違いますが)

この曲はイ短調で、当初はキルンベルガー(第3法)で練習していました。
試しにヴェルクマイスターにしてみたところ、A-Eの五度が狭いキルンベルガーよりも、冒頭などがスッキリした響きだったので、変更しました。
A-Eが純正なヴェルクマイスターは、キルンベルガー系音律が不得手なイ短調・イ長調が割と良いんですよね。
ただ短調なので、あえて狭い五度の曇った響きを選択するのもアリかと思います。
(ハ長調に転調する部分と、より対比をつけることもできる)
いずれにせよ、一般的な不等分律で演奏すれば概ね良好な曲ではないでしょうか。

しかし楽譜をよく見ると、Dis型ミーントーンなら使われている音が全て揃うので、ミーントーンでも音源を作ってみました。



大きな破綻はないですが、ヴェルクマイスターと比べると時折ハマりの悪い音程があります。
特に一番最後、終止音の前に長い音価で鳴る導音の嬰ト音が低い…
ヴァージナル曲や初期バロックの鍵盤曲だと、低い導音が曲調とマッチして古風な雰囲気を醸し出し、ミーントーン独特の世界が味わえるのですが、この曲の場合はあまり似つかわしいとはいえないようです。
きっとこの曲はもはやミーントーンではない時代の産物なのでしょうね。

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