ピタゴラス律のウルフと基音の関係
音律(スケール)変更できる電子ピアノで、ピタゴラス律に設定した場合の、基音とウルフの位置について説明します。
基本的なことは、こちらで説明しているミーントーンと同じです。
まず初期設定の基音Cの状態で、全ての5度を弾いてみます。
すると一箇所だけ、「合ってない」大きくうなりの出る5度があるはずです。
(この合ってない5度、ミーントーンは「広すぎ」ですが、ピタゴラス律は「狭すぎ」なことに注意)
多くの機種では以下のように、G♯ - E♭がそれ(ウルフ)だと思います。
五度圏図上で、この基音Cとウルフの位置関係をよく覚えてください。
(もしG♯ - E♭以外がウルフの場合は、その5度と基音Cの位置関係を把握)
基音を動かすと、この位置関係を保ったまま、ウルフも五度圏を移動します。
時計に見立てると、基音が時計回りに◆時間動いたら、ウルフもやはり時計回りに◆時間動くということです。
基音F、基音Gならこうなります。
ミーントーンの場合と全く同じですね。
ただし異名異音のミーントーンは、ウルフが動くとそれに伴い音律上の音名も変化しますが、ピタゴラス律は平均律のように完全でなくも、いわば「なんちゃって異名同音」が成立している点が違います。
上図には一応「ウルフ以外の5度は純正」を示す音名を書いておきましたが、実際は基音Fの方のA♭はG♯に、基音Gの方のD♯はE♭にもなり得ます。
それ以外の音についても、異名音が一応は有効で、曲中の使われ方によって適合・不適合が起こると考えてください。
その理由は、ミーントーンのウルフは純正より約36.5セントも広い超弩級なのに対し、ピタゴラス律のそれは約24セント狭いという軽度で済んでいるからが一つ、さらにこちらの記事で説明しているように、ピタゴラス律ではウルフを挟んで純正に近い三度が(偶然!)できてしまうことがあります。
ただこのせいで「この曲に使えそうか?使うならウルフの位置はどこ?」の判定が、音名から見当付けやすいミーントーンに比べ、ピタゴラス律は分かりにくいという難点があります。
ウルフ5度そのものを和音や重音で使ったり、近接使用さえしなければ、一応はどんな曲でも破綻せずに弾けますが、多くの長三度が平均律よりもさらに純正からハズレており、音痴演奏にしかならないことも多々あります。
まあ試してみないと分からないのが実際のところですが、とりあえずオススメは基音F♯にしたD-Aウルフのピタゴラス律です。
「調号が多い」は概ね4個以上、特に♭系です。
よほど遠隔調へ転調しない限り、D-Aウルフに抵触することはない調ですね。
特に「右手が旋律+左手が分散和音で伴奏」のロマン派曲、5度を多用する近現代モノで、ピタゴラス律の特徴が生きます。
★これについてはこちらの記事も御参考に。
ここでは最近のピアノ曲を、ピタゴラス律で演奏した例をあげておきます。
★変ニ長調、基音F♯のD-Aウルフ。
★中国民謡のピアノ編曲、5音音階、5度が多用されています。基音AのF-Cウルフ。
基本的なことは、こちらで説明しているミーントーンと同じです。
まず初期設定の基音Cの状態で、全ての5度を弾いてみます。
すると一箇所だけ、「合ってない」大きくうなりの出る5度があるはずです。
(この合ってない5度、ミーントーンは「広すぎ」ですが、ピタゴラス律は「狭すぎ」なことに注意)
多くの機種では以下のように、G♯ - E♭がそれ(ウルフ)だと思います。
五度圏図上で、この基音Cとウルフの位置関係をよく覚えてください。
(もしG♯ - E♭以外がウルフの場合は、その5度と基音Cの位置関係を把握)
基音を動かすと、この位置関係を保ったまま、ウルフも五度圏を移動します。
時計に見立てると、基音が時計回りに◆時間動いたら、ウルフもやはり時計回りに◆時間動くということです。
基音F、基音Gならこうなります。
ミーントーンの場合と全く同じですね。
ただし異名異音のミーントーンは、ウルフが動くとそれに伴い音律上の音名も変化しますが、ピタゴラス律は平均律のように完全でなくも、いわば「なんちゃって異名同音」が成立している点が違います。
上図には一応「ウルフ以外の5度は純正」を示す音名を書いておきましたが、実際は基音Fの方のA♭はG♯に、基音Gの方のD♯はE♭にもなり得ます。
それ以外の音についても、異名音が一応は有効で、曲中の使われ方によって適合・不適合が起こると考えてください。
その理由は、ミーントーンのウルフは純正より約36.5セントも広い超弩級なのに対し、ピタゴラス律のそれは約24セント狭いという軽度で済んでいるからが一つ、さらにこちらの記事で説明しているように、ピタゴラス律ではウルフを挟んで純正に近い三度が(偶然!)できてしまうことがあります。
ただこのせいで「この曲に使えそうか?使うならウルフの位置はどこ?」の判定が、音名から見当付けやすいミーントーンに比べ、ピタゴラス律は分かりにくいという難点があります。
ウルフ5度そのものを和音や重音で使ったり、近接使用さえしなければ、一応はどんな曲でも破綻せずに弾けますが、多くの長三度が平均律よりもさらに純正からハズレており、音痴演奏にしかならないことも多々あります。
まあ試してみないと分からないのが実際のところですが、とりあえずオススメは基音F♯にしたD-Aウルフのピタゴラス律です。
「調号が多い」は概ね4個以上、特に♭系です。
よほど遠隔調へ転調しない限り、D-Aウルフに抵触することはない調ですね。
特に「右手が旋律+左手が分散和音で伴奏」のロマン派曲、5度を多用する近現代モノで、ピタゴラス律の特徴が生きます。
★これについてはこちらの記事も御参考に。
ここでは最近のピアノ曲を、ピタゴラス律で演奏した例をあげておきます。
★変ニ長調、基音F♯のD-Aウルフ。
★中国民謡のピアノ編曲、5音音階、5度が多用されています。基音AのF-Cウルフ。
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無題
- ベルカント
- 2019/08/07(Wed)05:30:21
- 編集
ピタゴラス律の説明もありがとうございます。
こちらは異名同音が成り立つ事もあるのですね。
古典調律は奥が深いです。
モーツァルトについての考察も大変参考になりました。自分の考え方も少しは当てになり始めたと喜んでおります。
しかし、知れば知るほどミーントーンは偉大ですし、ウェルテンペラメントも偉大な発明であったと感じます。
平島先生達の時代と違い、当たり前の様に電子ピアノに音律の機能が付いている今、これを使わない手は無いと感じるのは私だけでしょうか?
音大では固定ド、絶対音感が重宝されますが、相対音感を豊かに育む事を忘れては本末転倒と感じます。
教育体系が出来上がってしまっているので、なかなか修正が難しいところがあるのでしょうが、ピタゴラスからのバトンを受け取る為にも、広い視野の教育が行われる様になると良いですね^_^
こちらは異名同音が成り立つ事もあるのですね。
古典調律は奥が深いです。
モーツァルトについての考察も大変参考になりました。自分の考え方も少しは当てになり始めたと喜んでおります。
しかし、知れば知るほどミーントーンは偉大ですし、ウェルテンペラメントも偉大な発明であったと感じます。
平島先生達の時代と違い、当たり前の様に電子ピアノに音律の機能が付いている今、これを使わない手は無いと感じるのは私だけでしょうか?
音大では固定ド、絶対音感が重宝されますが、相対音感を豊かに育む事を忘れては本末転倒と感じます。
教育体系が出来上がってしまっているので、なかなか修正が難しいところがあるのでしょうが、ピタゴラスからのバトンを受け取る為にも、広い視野の教育が行われる様になると良いですね^_^
無題
- REIKO
- 2019/08/08(Thu)13:30:40
- 編集
ベルカントさん、コメントありがとうございます。
>こちらは異名同音が成り立つ事もあるのですね
はい、例えば動画の中国民謡の方、最後に五度圏図が出ますが、基準のA音から時計回りに純正5度で音を決めていくと、D♯の次はA♯(更にその次はFでなくE♯)と書くべきになります。
しかしこの曲ではA♯ではなくB♭として、Fと5度、Dと長三度で鳴ったりしているので、B♭・Fと書いています。
ミーントーンのウルフは非常に大きいので、五度圏サークル上でそれを「またげない」のですが、ピタゴラス律のウルフは軽度のため、一応「またいで」考えることもできるのです。
(つまり基準音Aから時計と逆回りに、ウルフをまたいで音名を振って考えても一応OK!)
>電子ピアノに音律の機能
>これを使わない手は無い
私もそう思います。
人前の演奏で使うかどうかはともかく、色々遊んで&体験してみることは大いに勉強になると思うのですが、一般のピアノ愛好者で興味を示す人はあまりいないのが現状です。
取説なんかほとんど読まない人もいますし…もったいない!(笑)
>こちらは異名同音が成り立つ事もあるのですね
はい、例えば動画の中国民謡の方、最後に五度圏図が出ますが、基準のA音から時計回りに純正5度で音を決めていくと、D♯の次はA♯(更にその次はFでなくE♯)と書くべきになります。
しかしこの曲ではA♯ではなくB♭として、Fと5度、Dと長三度で鳴ったりしているので、B♭・Fと書いています。
ミーントーンのウルフは非常に大きいので、五度圏サークル上でそれを「またげない」のですが、ピタゴラス律のウルフは軽度のため、一応「またいで」考えることもできるのです。
(つまり基準音Aから時計と逆回りに、ウルフをまたいで音名を振って考えても一応OK!)
>電子ピアノに音律の機能
>これを使わない手は無い
私もそう思います。
人前の演奏で使うかどうかはともかく、色々遊んで&体験してみることは大いに勉強になると思うのですが、一般のピアノ愛好者で興味を示す人はあまりいないのが現状です。
取説なんかほとんど読まない人もいますし…もったいない!(笑)
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