変イ長調とヴェルクマイスターの微妙な関係
変イ長調の曲で、ヴェルクマイスターと平均律を弾き比べてみました。
ネタにしたのはキャサリン・ロリンの「Sweet Elegy」(楽譜はこちらに収録)で、転調なし&変イ長調の音階構成音以外はG♭音が数回出てくるだけの単純な作りです。
(その割には良い曲だと思いますが)
◆ヴェルクマイスター
◆平均律
変イ長調の音階構成音は、五度圏図でD♭から時計回りにGまでとなり、ヴェルクマイスターにとっては純正五度が多いかわりに長三度がかなり広いほぼ裏領域です。
一方平均律はどこも同じ(笑)、変イ長調だからって特に何がどうということはありません。
この曲は「分散」してない同時打鍵の和音が左手に多く、ヴェルクマイスターで練習しながら「ちょっと和音の響きが硬いなあ…」と思っていました。
良く言えば、純正五度のおかげかスッキリしてるのですが、どうも音相互の馴染みが悪いんですね。
ただ伴奏に対して旋律が浮き出る効果はあり、それを優先するなら悪くはないなという感じ。
平均律は響きが曇って旋律も少し沈むとはいえ、全体的なまとまりが良い印象です。
まあどっちもどっちと言うか、こういう曲で和音も旋律も立てるのは、音が固定されている鍵盤楽器にはツライ、というのが正直なところ。
そこでどうせなら「ほぼ裏」のヴェルクマイスターとかでなく、ピタゴラス律にしてみようと思ったんです。
使用音が少ない曲だし、関係ない場所(例えばD-A)にウルフを回せば、不都合なく演奏できるだろうと。
ところがそうは上手く行かなかったんですね、それはこの部分です↓
赤枠で囲った、係留和音中の四分音符・A♭音がG音(青丸)になって解決する動き、これが曲中何度も出てくるのですが、ピタゴラス律ではG音が前拍の二分音符・E♭音に対して高すぎ、解決したように聴こえません!
解決音は、アクセントを付ける係留和音から自然に移行する感じで軽く添えるのですが、それだけに音程が悪いとどうにも落ち着かない…上手くごまかせないかと演奏で工夫しても、納得行くようにできませんでした。
この曲はヴェルクマイスターだってほとんど裏だったのに、ピタゴラス律と何が違ったの?と思い、五度圏図で考えてみました。
ヴェルクマイスターはC-Gが純正より約6セント狭いので、E♭-Gの長三度もピタゴラス律より6セント狭くなっています。
これでもまだ純正長三度よりずっと広いのですが、ピタゴラス律より6セント改善されただけで、随分と音程の落ち着きが違うのです。
いや~~、端っこ(笑)のC-Gだけど -6セント入ってて良かった~~!と思いました、ここは変イ長調の属和音が関係するので重要なんですね。
何を隠そう私は係留フェチ(笑)で、曲中一番気に入っていてしかも何度も出てくる部分がダメになる音律では、使う気になれません。
数セントの違いでも、場合によっては決定的になることもあるんだなと思い知った次第です。
なお平均律では、E♭-Gの間で合計8セント分ピタゴラス長三度より狭くなっているので、係留和音の「解決感」はヴェルクマイスターの同一箇所より、約2セント良くなっています。
ただこの点に関しては、(少なくとも私は)両者にそれほど大きな違いを感じませんでした。
では逆に、ピタゴラス長三度より4セント狭い…だったらどうなのか?2セントでは?
係留和音が解決して聴こえる長三度の広さをどこまで許容できるか、可否の境界線を探ったら面白いと思いますね。
ネタにしたのはキャサリン・ロリンの「Sweet Elegy」(楽譜はこちらに収録)で、転調なし&変イ長調の音階構成音以外はG♭音が数回出てくるだけの単純な作りです。
(その割には良い曲だと思いますが)
◆ヴェルクマイスター
◆平均律
変イ長調の音階構成音は、五度圏図でD♭から時計回りにGまでとなり、ヴェルクマイスターにとっては純正五度が多いかわりに長三度がかなり広いほぼ裏領域です。
一方平均律はどこも同じ(笑)、変イ長調だからって特に何がどうということはありません。
この曲は「分散」してない同時打鍵の和音が左手に多く、ヴェルクマイスターで練習しながら「ちょっと和音の響きが硬いなあ…」と思っていました。
良く言えば、純正五度のおかげかスッキリしてるのですが、どうも音相互の馴染みが悪いんですね。
ただ伴奏に対して旋律が浮き出る効果はあり、それを優先するなら悪くはないなという感じ。
平均律は響きが曇って旋律も少し沈むとはいえ、全体的なまとまりが良い印象です。
まあどっちもどっちと言うか、こういう曲で和音も旋律も立てるのは、音が固定されている鍵盤楽器にはツライ、というのが正直なところ。
そこでどうせなら「ほぼ裏」のヴェルクマイスターとかでなく、ピタゴラス律にしてみようと思ったんです。
使用音が少ない曲だし、関係ない場所(例えばD-A)にウルフを回せば、不都合なく演奏できるだろうと。
ところがそうは上手く行かなかったんですね、それはこの部分です↓
赤枠で囲った、係留和音中の四分音符・A♭音がG音(青丸)になって解決する動き、これが曲中何度も出てくるのですが、ピタゴラス律ではG音が前拍の二分音符・E♭音に対して高すぎ、解決したように聴こえません!
解決音は、アクセントを付ける係留和音から自然に移行する感じで軽く添えるのですが、それだけに音程が悪いとどうにも落ち着かない…上手くごまかせないかと演奏で工夫しても、納得行くようにできませんでした。
この曲はヴェルクマイスターだってほとんど裏だったのに、ピタゴラス律と何が違ったの?と思い、五度圏図で考えてみました。
ヴェルクマイスターはC-Gが純正より約6セント狭いので、E♭-Gの長三度もピタゴラス律より6セント狭くなっています。
これでもまだ純正長三度よりずっと広いのですが、ピタゴラス律より6セント改善されただけで、随分と音程の落ち着きが違うのです。
いや~~、端っこ(笑)のC-Gだけど -6セント入ってて良かった~~!と思いました、ここは変イ長調の属和音が関係するので重要なんですね。
何を隠そう私は係留フェチ(笑)で、曲中一番気に入っていてしかも何度も出てくる部分がダメになる音律では、使う気になれません。
数セントの違いでも、場合によっては決定的になることもあるんだなと思い知った次第です。
なお平均律では、E♭-Gの間で合計8セント分ピタゴラス長三度より狭くなっているので、係留和音の「解決感」はヴェルクマイスターの同一箇所より、約2セント良くなっています。
ただこの点に関しては、(少なくとも私は)両者にそれほど大きな違いを感じませんでした。
では逆に、ピタゴラス長三度より4セント狭い…だったらどうなのか?2セントでは?
係留和音が解決して聴こえる長三度の広さをどこまで許容できるか、可否の境界線を探ったら面白いと思いますね。
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ヴェルクマイスターの表と裏
不等分律で、長三度の純正からのズレが比較的少ない領域を表、ズレが大きい領域を裏と言うことがあります。
学問的な用語ではなく、あくまで俗な表現ですが。
では聴感上、表と裏でどれくらい違うのか、体験に格好のサンプル曲を見つけたので、ヴェルクマイスターで演奏してみました。
キャサリン・ロリン「Pure Heart」…★楽譜はこちらの曲集に収録
(音量が小さいと違いが分かり難いです、ヘッドホン推奨)
16小節の主題が、多少伴奏を変えただけで4回繰り返され、最後に短いコーダがつく単純な曲ですが、ハ長調で始まり3回目(画像でオレンジ色の花がアップになる部分)で半音上の変ニ長調に転調、その後またハ長調に戻ります。
(コーダ以外の部分では、臨時記号もごくわずか)
五度圏図で分かるように、調号無しのハ長調とフラットが5つも付く変ニ長調では、音階構成音の領域がほとんど反対になります。↓
つまりこの「Pure Heart」では転調時に、ヴェルクマイスターの表から裏そしてまた表へと変わる様子が聴けるんですね。
曲中変ニ長調の部分は変ハ音(=ロ音)が2回鳴る以外は音階内の音しか使ってないため、ほぼピタゴラス律(長三度がバカ広い)で鳴っており、狭い五度が多いけれど長三度は割と良いハ長調とは真逆状態です。
ヴェルクマイスターで最も響きが異なる2調間での転調、聴いてみてどんな印象でしょうか?
何が違うの?って人から、ボロクソに言われている平均律よりもさらに長三度が劣化している変ニ長調が音痴で耐えられない人、いやこれが有名なあの調性感ってやつでしょ、なるほど…と頷く人まで色々だと思います。
(あくまでこの曲限定ですが)私は弾いていて、変ニ長調がこの程度の崩れ?なら許容範囲内というか、むしろ気分が変わって面白いと思いました。
ちょっと遠い所に来た感じ…と言えばいいでしょうか。
主題を4回繰り返す内、3回目がコレ(笑)って、出番としてはナイスタイミングです。
その後また安定したハ長調に戻って終わるので、問題ありません。
ただこの曲は平均律のピアノで作ったのでしょうから、本来は転調しても音律による響きの変化などは無く、音程関係が全く同じまま半音上下するだけのはず。
平均律でも弾いてみましたが、ヴェルクマイスターに比べ正直言って退屈でした。
主題はなかなか清純な魅力があっても、構成的には駄曲と言われてもしょうがないでしょうねえ。
時々こういう安易な曲があるんですよね、キャサリン・ロリンは…売れっ子で忙しいせいかもしれませんが…(^ ^;)
学問的な用語ではなく、あくまで俗な表現ですが。
では聴感上、表と裏でどれくらい違うのか、体験に格好のサンプル曲を見つけたので、ヴェルクマイスターで演奏してみました。
キャサリン・ロリン「Pure Heart」…★楽譜はこちらの曲集に収録
(音量が小さいと違いが分かり難いです、ヘッドホン推奨)
16小節の主題が、多少伴奏を変えただけで4回繰り返され、最後に短いコーダがつく単純な曲ですが、ハ長調で始まり3回目(画像でオレンジ色の花がアップになる部分)で半音上の変ニ長調に転調、その後またハ長調に戻ります。
(コーダ以外の部分では、臨時記号もごくわずか)
五度圏図で分かるように、調号無しのハ長調とフラットが5つも付く変ニ長調では、音階構成音の領域がほとんど反対になります。↓
つまりこの「Pure Heart」では転調時に、ヴェルクマイスターの表から裏そしてまた表へと変わる様子が聴けるんですね。
曲中変ニ長調の部分は変ハ音(=ロ音)が2回鳴る以外は音階内の音しか使ってないため、ほぼピタゴラス律(長三度がバカ広い)で鳴っており、狭い五度が多いけれど長三度は割と良いハ長調とは真逆状態です。
ヴェルクマイスターで最も響きが異なる2調間での転調、聴いてみてどんな印象でしょうか?
何が違うの?って人から、ボロクソに言われている平均律よりもさらに長三度が劣化している変ニ長調が音痴で耐えられない人、いやこれが有名なあの調性感ってやつでしょ、なるほど…と頷く人まで色々だと思います。
(あくまでこの曲限定ですが)私は弾いていて、変ニ長調がこの程度の崩れ?なら許容範囲内というか、むしろ気分が変わって面白いと思いました。
ちょっと遠い所に来た感じ…と言えばいいでしょうか。
主題を4回繰り返す内、3回目がコレ(笑)って、出番としてはナイスタイミングです。
その後また安定したハ長調に戻って終わるので、問題ありません。
ただこの曲は平均律のピアノで作ったのでしょうから、本来は転調しても音律による響きの変化などは無く、音程関係が全く同じまま半音上下するだけのはず。
平均律でも弾いてみましたが、ヴェルクマイスターに比べ正直言って退屈でした。
主題はなかなか清純な魅力があっても、構成的には駄曲と言われてもしょうがないでしょうねえ。
時々こういう安易な曲があるんですよね、キャサリン・ロリンは…売れっ子で忙しいせいかもしれませんが…(^ ^;)
基音変更機能の使いどころ♪
多くの電子ピアノの古典調律には「基音変更機能」が付いています。
今回はその使いどころを御紹介!
サンプル曲は、ジェニファー・リンの初級者向け印象派様式の曲集「Les Petites Images」から「Tonnerre sur les plaines(Tunder on the Plains)」です。
羊飼いの笛がのどかに響く草原に突然の雷鳴が…というストーリーに合わせた画像付き動画でどうぞ。
この曲、当初ヴェルクマイスターで弾いてましたが、少々困ったことが起きました。
27秒~からの、ペダル踏みっぱなしで空五度を4連打(それもフォルテやフォルテシモで)する雷鳴のモチーフです。
空五度は D-A と B♭-F の2種あり、前者がヴェルクマイスターの純正より約6セント狭い五度に引っかかるんですね…他の音が混じってるとか、弱音ならそれほど気になりませんが、この曲では不具合まで行かずともドヨ~~~ンと鈍い響きがして、弾いてて全然嬉しくないんですよ。
せっかくカッコ良い所なのに…。
試しにキルンベルガー(第三法)に切り替えてみると、D-A はごく僅かですがマシにはなります。
ヴェルクマイスターよりは、狭すぎない五度なので当然ですね。
平均律にすれば、純正より約2セント狭いだけなので、まあまあです。
(2006年出版の曲集なので、平均律作曲でしょうからこれも当然)
しかし可でもなく不可でもない平均律じゃ、わざわざ演奏アップする意味がない?ので、基音変更機能を使い D-A と B♭-F どちらも純正五度になるよう、ヴェルクマイスターを時計と反対回りに五度圏で1ステップ動かしてみました。
◆これをヴェルクマイスターのヘ長調(F)型などと言う人がいますが、本来の不等分律は調律替えなしに固定して使うものなので、あくまで名無し音律です。
(何か名称がある音律の可能性もゼロではありませんが)
弾いてみると…これメチャ良いじゃないですか!
ガーーーン、ゴーーーン!と透明感のある真っ直ぐな響き(平均律5度では微妙に濁りや揺れが出る)は、鋭角的にもかかわらず、どんなに強打しようと何回弾こうと耳が疲れません。
というか、キモチ良いのでつい何回も弾いてしまうんですよ(笑)。
単に和音を構成している2音の協和が美しいだけでなく、共鳴・共振で聴こえてくる諸々の音(電子ピアノも相当頑張って?再現している)も、彫りの深い響きが素晴らしい!
こんな風に鳴ってくれれば、演奏者としても弾き甲斐があるというものです。
五度圏図を描いて考えれば、基音変更した時の狭い五度などの位置が簡単に分かります。こんな音律変更ワザが簡単に試せるのは、電子ピアノならではの長所です。
イメージ通りの音楽を作る一助として、どんどん利用してみてはいかがでしょうか♪
今回はその使いどころを御紹介!
サンプル曲は、ジェニファー・リンの初級者向け印象派様式の曲集「Les Petites Images」から「Tonnerre sur les plaines(Tunder on the Plains)」です。
羊飼いの笛がのどかに響く草原に突然の雷鳴が…というストーリーに合わせた画像付き動画でどうぞ。
この曲、当初ヴェルクマイスターで弾いてましたが、少々困ったことが起きました。
27秒~からの、ペダル踏みっぱなしで空五度を4連打(それもフォルテやフォルテシモで)する雷鳴のモチーフです。
空五度は D-A と B♭-F の2種あり、前者がヴェルクマイスターの純正より約6セント狭い五度に引っかかるんですね…他の音が混じってるとか、弱音ならそれほど気になりませんが、この曲では不具合まで行かずともドヨ~~~ンと鈍い響きがして、弾いてて全然嬉しくないんですよ。
せっかくカッコ良い所なのに…。
試しにキルンベルガー(第三法)に切り替えてみると、D-A はごく僅かですがマシにはなります。
ヴェルクマイスターよりは、狭すぎない五度なので当然ですね。
平均律にすれば、純正より約2セント狭いだけなので、まあまあです。
(2006年出版の曲集なので、平均律作曲でしょうからこれも当然)
しかし可でもなく不可でもない平均律じゃ、わざわざ演奏アップする意味がない?ので、基音変更機能を使い D-A と B♭-F どちらも純正五度になるよう、ヴェルクマイスターを時計と反対回りに五度圏で1ステップ動かしてみました。
◆これをヴェルクマイスターのヘ長調(F)型などと言う人がいますが、本来の不等分律は調律替えなしに固定して使うものなので、あくまで名無し音律です。
(何か名称がある音律の可能性もゼロではありませんが)
弾いてみると…これメチャ良いじゃないですか!
ガーーーン、ゴーーーン!と透明感のある真っ直ぐな響き(平均律5度では微妙に濁りや揺れが出る)は、鋭角的にもかかわらず、どんなに強打しようと何回弾こうと耳が疲れません。
というか、キモチ良いのでつい何回も弾いてしまうんですよ(笑)。
単に和音を構成している2音の協和が美しいだけでなく、共鳴・共振で聴こえてくる諸々の音(電子ピアノも相当頑張って?再現している)も、彫りの深い響きが素晴らしい!
こんな風に鳴ってくれれば、演奏者としても弾き甲斐があるというものです。
五度圏図を描いて考えれば、基音変更した時の狭い五度などの位置が簡単に分かります。こんな音律変更ワザが簡単に試せるのは、電子ピアノならではの長所です。
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