五度圏図の基本
音律を図示してその構成を把握するのに便利なのが、時計のような五度圏図です。
現在では、コンピュータで三次元的に描画する方法もたくさん考案されていますが、何と言ってもこの五度圏図は、チラシの裏に鉛筆でも書ける気軽さが魅力!
これが理解できないと音律の理論も実践も難しいので、今回は五度圏図の基本を説明します。
まず円を書いて、円周を時計のように12等分します。
12時の位置から始めて、右回り(時計回り)に五度上の音を順に書き入れます。
ポイント:五度圏図は「右回り」に見るのが基本!
ここで問題になるのが、日本では色々な音名が使われてることですが・・・
![](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/fcad91b2817c28d82c7af86f27b0fea4/1338390569)
このブログでは、原則として英語音名で行くことにします。
C⇒G⇒D・・・と進んで、・・・F⇒Cで一周し、12の音が全て揃います。
A⇒B⇒C・・・と並んでいれば簡単なのに、なぜ五度間隔なんだ!と思いますが、この方法だと非常に便利なことがたくさんあるのです。
例えば ──── ハ長調音階の音が、どこに並んでいるか探してみてください。
またト長調音階ではどうでしょう?
こうなりますね♪↓↓↓
![](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/fcad91b2817c28d82c7af86f27b0fea4/1338390646)
ポイント:長調の音階構成音は、主音の一つ左隣から順に半円状に並んでいる!
ハ長調⇒ト長調の転調は、五度圏を一つ右に回るだけ(FをF#に代えるだけ)なのが一目で分かります。
つまり五度上への転調が一番簡単&自然なのは、音階の音を一つ取り替えるだけだから。
同様に五度下(ハ長調⇒ヘ長調)への転調も、一音だけの変更で済みます。
このように、主音が五度隣の調同士を(五度)近親調といいますが、五度圏図ではそれらが実際に仲良く並んでいるのです。
ト長調始まりの曲で臨時記号も少なければ、その曲は五度圏図の右半分の音中心に鳴っているので、この領域の音程(主に五度や長三度)が正しければ「美しく」聴こえるはずです。
まあ左半分は適当でもいい(笑)ってことですね。
ですが曲中、同名短調のト短調に転調したらどうなるでしょうか?
ト短調(自然的短音階とすれば)の構成音は、五度圏図の上半分になります。↓↓↓
![](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/fcad91b2817c28d82c7af86f27b0fea4/1338390662)
左側は適当・・・とは言ってられなくなりますね。(笑)
ある程度複雑で長い曲は、最初が何調であろうと曲中頻繁に転調して、五度圏を縦横無尽に駆け回っていることがほとんどです。
それでも楽譜を読んで五度圏図と照らし合わせてみると、「メイン領域」「出張(笑)領域」とか「左回りにどんどん転調」「十文字和音(C・A・F#・E♭)」など、色々と面白いことに気づきます。
音律は必ずどこかにしわよせを持っているので、このような見方が最適音律を見つける際の重要なヒントになるのです。
現在では、コンピュータで三次元的に描画する方法もたくさん考案されていますが、何と言ってもこの五度圏図は、チラシの裏に鉛筆でも書ける気軽さが魅力!
これが理解できないと音律の理論も実践も難しいので、今回は五度圏図の基本を説明します。
まず円を書いて、円周を時計のように12等分します。
12時の位置から始めて、右回り(時計回り)に五度上の音を順に書き入れます。
ポイント:五度圏図は「右回り」に見るのが基本!
ここで問題になるのが、日本では色々な音名が使われてることですが・・・
このブログでは、原則として英語音名で行くことにします。
C⇒G⇒D・・・と進んで、・・・F⇒Cで一周し、12の音が全て揃います。
A⇒B⇒C・・・と並んでいれば簡単なのに、なぜ五度間隔なんだ!と思いますが、この方法だと非常に便利なことがたくさんあるのです。
例えば ──── ハ長調音階の音が、どこに並んでいるか探してみてください。
またト長調音階ではどうでしょう?
こうなりますね♪↓↓↓
ポイント:長調の音階構成音は、主音の一つ左隣から順に半円状に並んでいる!
ハ長調⇒ト長調の転調は、五度圏を一つ右に回るだけ(FをF#に代えるだけ)なのが一目で分かります。
つまり五度上への転調が一番簡単&自然なのは、音階の音を一つ取り替えるだけだから。
同様に五度下(ハ長調⇒ヘ長調)への転調も、一音だけの変更で済みます。
このように、主音が五度隣の調同士を(五度)近親調といいますが、五度圏図ではそれらが実際に仲良く並んでいるのです。
ト長調始まりの曲で臨時記号も少なければ、その曲は五度圏図の右半分の音中心に鳴っているので、この領域の音程(主に五度や長三度)が正しければ「美しく」聴こえるはずです。
まあ左半分は適当でもいい(笑)ってことですね。
ですが曲中、同名短調のト短調に転調したらどうなるでしょうか?
ト短調(自然的短音階とすれば)の構成音は、五度圏図の上半分になります。↓↓↓
左側は適当・・・とは言ってられなくなりますね。(笑)
ある程度複雑で長い曲は、最初が何調であろうと曲中頻繁に転調して、五度圏を縦横無尽に駆け回っていることがほとんどです。
それでも楽譜を読んで五度圏図と照らし合わせてみると、「メイン領域」「出張(笑)領域」とか「左回りにどんどん転調」「十文字和音(C・A・F#・E♭)」など、色々と面白いことに気づきます。
音律は必ずどこかにしわよせを持っているので、このような見方が最適音律を見つける際の重要なヒントになるのです。
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平均律じゃないとダメな曲?
以前現代日本人作曲家のピアノ小品に古典調律を試したら、意外と上手く適合して興味深く思っていましたが、中にはど~しても平均律(またはそれに近い音律)じゃないとダメな曲も存在します。
え?それってどんな曲かって・・・例えばこういう曲です↓↓↓
矢代秋雄さんの1963年作品です ──── 拍子抜けするほど古典的で、初心者でも弾ける簡単な曲なのに(昔愛奏してました)、一体どこが古典調律にとって問題なのか?
困ったその1:最初から最後までイ長調である
困ったその2:旋律と和音の両方に美しさが要求される
困ったその3:テンポが遅く音の数が少ない(のでゴマカシがきかない)
イ長調はキルンベルガー音律の苦手な調で、第一法はボロボロ、二法はヨレヨレ、三法では大きく改善し旋律は良くなっても、要所で和音が汚く「合格」にはちょっと厳しい感じです。
私はイ長調が比較的得意なヴェルクマイスターに期待してましたが、A音が低く聴こえてしまい旋律がイマイチ。
(A音はヴェルクマイスターで相対的に最も低い音で、通常これは問題になるほどの低さではありませんが、この曲とは相性が悪いということです)
ミーントーンとピタゴラス律はどちらもウルフの位置決めはラクですが、前者は旋律が後者は和音が悪くてちょっと使えません。
ヤング、ヴァロッティは目立った不具合はなくとも、平均律より良いか?というと疑問で、専用音律でも作るのでなければ、平均律が一番「適合」する曲なんですね。
ところで、いつも適合した音律での音源ばかりだと、どれも違和感なく聴こえて「古典調律って平均律とどこが違うのか?」「音律の差なんてあまりに微妙で、実際はどーでもいいことなんじゃないか」と思う方もいるかもしれない?ので、今回はこの「おすまし」を例に、適合しない例を紹介します。
【キルンベルガー第一法】↓↓↓
この音律でベートーヴェンの「熱情」が演奏できるのに、信じられますか?この壊滅的(笑)な状況・・・
イ長調下属和音の五度D-Aが音律の狭い五度に当たる一方、A-C#(D♭)の長三度は広すぎるなど、音律の弱点に何度も抵触している結果です。
これが平均律と同じに聴こえる人はいませんね ──── それくらい音の割り振り方が違うのです。
【ミーントーン】↓↓↓
曲中 D#とE#があるので、それらの音が揃うようウルフを動かしたんですが ────
冒頭の、E⇒F#⇒G#⇒A (移動ドなら「ソ~ラシド」)と音階を上っていく旋律は、G#が低く感じてしまいます。
このG#はEに対して純正長三度で、その意味では「正しい音程」ですが、この旋律には純正よりも広い長三度の方が向いてるのです。
もし矢代さんのピアノがミーントーンだったら、この旋律は生まれなかったはず。
逆にミーントーンの時代には、それでも音痴にならないように曲が書かれていました。
つまり音律が違えば、出来上がる曲も違うのです!
え?それってどんな曲かって・・・例えばこういう曲です↓↓↓
矢代秋雄さんの1963年作品です ──── 拍子抜けするほど古典的で、初心者でも弾ける簡単な曲なのに(昔愛奏してました)、一体どこが古典調律にとって問題なのか?
困ったその1:最初から最後までイ長調である
困ったその2:旋律と和音の両方に美しさが要求される
困ったその3:テンポが遅く音の数が少ない(のでゴマカシがきかない)
イ長調はキルンベルガー音律の苦手な調で、第一法はボロボロ、二法はヨレヨレ、三法では大きく改善し旋律は良くなっても、要所で和音が汚く「合格」にはちょっと厳しい感じです。
私はイ長調が比較的得意なヴェルクマイスターに期待してましたが、A音が低く聴こえてしまい旋律がイマイチ。
(A音はヴェルクマイスターで相対的に最も低い音で、通常これは問題になるほどの低さではありませんが、この曲とは相性が悪いということです)
ミーントーンとピタゴラス律はどちらもウルフの位置決めはラクですが、前者は旋律が後者は和音が悪くてちょっと使えません。
ヤング、ヴァロッティは目立った不具合はなくとも、平均律より良いか?というと疑問で、専用音律でも作るのでなければ、平均律が一番「適合」する曲なんですね。
ところで、いつも適合した音律での音源ばかりだと、どれも違和感なく聴こえて「古典調律って平均律とどこが違うのか?」「音律の差なんてあまりに微妙で、実際はどーでもいいことなんじゃないか」と思う方もいるかもしれない?ので、今回はこの「おすまし」を例に、適合しない例を紹介します。
【キルンベルガー第一法】↓↓↓
この音律でベートーヴェンの「熱情」が演奏できるのに、信じられますか?この壊滅的(笑)な状況・・・
イ長調下属和音の五度D-Aが音律の狭い五度に当たる一方、A-C#(D♭)の長三度は広すぎるなど、音律の弱点に何度も抵触している結果です。
これが平均律と同じに聴こえる人はいませんね ──── それくらい音の割り振り方が違うのです。
【ミーントーン】↓↓↓
曲中 D#とE#があるので、それらの音が揃うようウルフを動かしたんですが ────
冒頭の、E⇒F#⇒G#⇒A (移動ドなら「ソ~ラシド」)と音階を上っていく旋律は、G#が低く感じてしまいます。
このG#はEに対して純正長三度で、その意味では「正しい音程」ですが、この旋律には純正よりも広い長三度の方が向いてるのです。
もし矢代さんのピアノがミーントーンだったら、この旋律は生まれなかったはず。
逆にミーントーンの時代には、それでも音痴にならないように曲が書かれていました。
つまり音律が違えば、出来上がる曲も違うのです!
ベートーヴェンPソナタ~へ短調の秘密
ベートーヴェンのピアノソナタ 第1番 ヘ短調第1楽章、音律はキルンベルガー第二法です。
![](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/fcad91b2817c28d82c7af86f27b0fea4/1338122843)
ベートーヴェンのピアノソナタと、キルンベルガー第二法の相性の良さに気づいたのは、ブルクミュラーがきっかけでした。
(風が吹くと桶屋がもうかる式の話?)
【経過説明】いろんな曲をキルンベルガー第一法(第二法ではなく)で鳴らして遊んで?いた
⇒ ブルクミュラー25練習曲の「舟歌」(変イ長調)が、D-Aウルフにひっかからず上手く鳴ることに気づく
⇒ 曲集全体では第一法だと不具合続出なので、これは「偶然」と考えられる
⇒ そうか、♭4つの変イ長調は音階内にD-Aを含まないので、ウルフに引っかかりにくいんだな~と気づく
⇒ 他にも♭4つの曲を試してみよう・・・何かいい曲ないかいな?
⇒ 大好きなベトベンの第1番ヘ短調(♭4つ)のことを思い出す
⇒ そういえば、何故第1番がヘ短調という変な調?なのか、昔から不思議だったなあ
⇒ 試してみると、第1・4楽章は(予想通り)第一法でバッチリ、しかし第3楽章はヘ長調のトリオで一瞬D-Aにカスり、第2楽章(ヘ長調)はガタガタ・・・。
⇒ 第二法にすると不具合は完全に改善、音律の特性と曲調&書法のマッチングに驚愕!
\(^ ^)/■■これは二法の曲ですよ ■■\(^ ^)/
思うに子供の頃から親しんでいた曲が、私をこの素晴らしい発見に導いてくれたようなものです。
バラバラだったパズルのピースが、ピタッとはまったような瞬間でした。
ヘ短調という調性は、一見キルンベルガー第二法の純正領域とは関係ないように思えます。
しかし! 和声的短音階ではヘ短調の属和音がCEGに、ヘ短調の属調ハ短調の属和音がGBDとなるので、ここで第二法の美点が生きるのです。
ベートーヴェンは要所でこれらを使っており、狭い五度に対しては「安全圏」で、しかも純正音程も生かせるヘ短調は、第二法にとって格好の調なんですね。
後に彼は再度この調で「熱情」を書きますが、希代の名曲誕生の裏にキルンベルガー音律の存在があったのは間違いないと思います。
もっとも「熱情」は、第一法ではないかな?と私は思っていますが。
それはまた別の記事で。
ベートーヴェンのピアノソナタと、キルンベルガー第二法の相性の良さに気づいたのは、ブルクミュラーがきっかけでした。
(風が吹くと桶屋がもうかる式の話?)
【経過説明】いろんな曲をキルンベルガー第一法(第二法ではなく)で鳴らして遊んで?いた
⇒ ブルクミュラー25練習曲の「舟歌」(変イ長調)が、D-Aウルフにひっかからず上手く鳴ることに気づく
⇒ 曲集全体では第一法だと不具合続出なので、これは「偶然」と考えられる
⇒ そうか、♭4つの変イ長調は音階内にD-Aを含まないので、ウルフに引っかかりにくいんだな~と気づく
⇒ 他にも♭4つの曲を試してみよう・・・何かいい曲ないかいな?
⇒ 大好きなベトベンの第1番ヘ短調(♭4つ)のことを思い出す
⇒ そういえば、何故第1番がヘ短調という変な調?なのか、昔から不思議だったなあ
⇒ 試してみると、第1・4楽章は(予想通り)第一法でバッチリ、しかし第3楽章はヘ長調のトリオで一瞬D-Aにカスり、第2楽章(ヘ長調)はガタガタ・・・。
⇒ 第二法にすると不具合は完全に改善、音律の特性と曲調&書法のマッチングに驚愕!
\(^ ^)/■■これは二法の曲ですよ ■■\(^ ^)/
思うに子供の頃から親しんでいた曲が、私をこの素晴らしい発見に導いてくれたようなものです。
バラバラだったパズルのピースが、ピタッとはまったような瞬間でした。
ヘ短調という調性は、一見キルンベルガー第二法の純正領域とは関係ないように思えます。
しかし! 和声的短音階ではヘ短調の属和音がCEGに、ヘ短調の属調ハ短調の属和音がGBDとなるので、ここで第二法の美点が生きるのです。
ベートーヴェンは要所でこれらを使っており、狭い五度に対しては「安全圏」で、しかも純正音程も生かせるヘ短調は、第二法にとって格好の調なんですね。
後に彼は再度この調で「熱情」を書きますが、希代の名曲誕生の裏にキルンベルガー音律の存在があったのは間違いないと思います。
もっとも「熱情」は、第一法ではないかな?と私は思っていますが。
それはまた別の記事で。
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