忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

プチ最適化音律で変ホ長調とハ短調を演奏してみる

(前回に続き)ウルフを四分割する位置をF#~B♭にして、♭系の調にプチ最適化した修正ミーントーンで、今度はバッハの変ホ長調とハ短調(つまり♭3つ)の曲を演奏してみました。

フランス組曲第四番・アルマンド↓↓↓ (繰り返し省略)



★ウイーン原典版で打ち込んだ後で、動画に使える旧バッハ全集版を見たら、音がかなり違っていたので楽譜なしです・・・すみません。
(フランス組曲はバッハ自身が何度も手を入れ、伝承している多くの手稿譜の異同が大きいので、版により音や装飾音にかなり違いがあります ─── 新バッハ全集では、あえて「決定稿」を作らずに、二種の稿を併記しているそうです)

パルティータ第二番・シンフォニア↓↓↓



この音律にとって♭3つの調は、「適」と「不適」の中間、まあビミョー(笑)な線なので、どちらも少しクセを感じますが、それが古典調律らしいと言えるところでもあります。
変ホ長調は主和音の五度(E♭-B♭)が純正より約5セント広く、しかもそれが冒頭いきなり出てしまいますが・・・



この広い五度は、ミーントーンの五度(純正より約5.5セント狭い)よりも不純度が耳につきますね。
(少なくとも私はそうです ─── 逆の人、どっちも気になる&ならない人、色々かと思いますが)
ただ、「合ってないのは分かるけど、だからといって興をそがれるほどでもない、この程度?でガタガタ言ってたら鍵盤音楽なんか聴いてられない」のも事実なので(笑)、部分的なことは横に置いた全体の印象としては、この音律で中々いい雰囲気に聴こえてると思います。
後半、想定外?のG♭音も、ちょうどいい音程でキマッていますし。

一方ハ短調は、C-E♭やF-A♭の短三度が狭いので、のほほんムードだった変ホ長調から一転、いかにも短調らしい暗さが印象的です。
シンフォニア冒頭の「Grave Adagio」は、純正からかなりハズれた和音も多いため、響きとしては厳しいですが、キレイに響く調と比べてこれがハ短調の個性だと見てあげましょう♪
(「プチ」最適化にとどめたのは、♭系の調の間でも響きに「差」があるべきと思ったからなので)
中間のAndanteでは、上声部に所々出てくるD♭音が(D♭音としてはかなり低いのに)、絶妙な音程で決まっていて、それがAllegro前のカデンツ風の部分で突如としてC#となって登場するのが、音律的にはこのシンフォニアのハイライトです。
(ここでコケたら話にならない)

このシンフォニアを打ち込んでいて、ふと同じハ短調のベートーヴェン「悲愴」第一楽章を思い出しました。
冒頭Graveで、付点リズムを効果的に使った重厚な和音が良く似ています。
パルティータ6曲は、バッハが生前「クラヴィーア練習曲集・第一部」として出版しましたが、愛好家の一般的レベルに比して技巧的に難しすぎたためか、楽譜はあまり売れなかったそうです。
(従って、重版につぐ重版で当時広く普及した・・・わけではない)
むしろ教育目的?で重宝された「平均律クラヴィーア曲集」の方が、出版はされなくても筆写譜の形で広まり、ベートーヴェンもこれで勉強したと言われています。
(師ネーフェが、「平均律~」の筆写譜を持っていた)
さて「パルティータ」はどうだったのでしょうかね????
PR

♭系向きにプチ最適化した修正ミーントーン

前回の記事で、C#~Fでウルフを四分割した修正ミーントーンで「▲」(可)判定だった、バッハのパルティータ第1番(変ロ長調)の前奏曲です。↓↓↓



これだけ聴いてるぶんには「そんなに悪くない」ですが、こちらと比べると・・・↓↓↓



一番目の方は、何となく響きがガシャガシャしていませんか?
二番目の方が、全体にしっとり落ち着いた感じで、和音が美しく溶け合っています。
何が違うかというと、こういうことですね。↓↓↓



以前のC#~Fでウルフを分割していた修正ミーントーンを「通常型」とすると、分割の位置を時計と逆回りに1つずらしてF#~B♭にしてみたのが、今回(二番目の方)の♭型です。
このようにすると♭系の調では、純正あるいは良好な長三度が鳴る頻度が通常型よりも多くなるので、響きが美しくなります。
何しろこの修正ミーントーンは純正五度が1つも無く、純正長三度をメインとした三度とそれを転回した六度音程だけがとりえ(笑)のため、広い五度領域を挟む音程が曲中頻出すると、急に響きが劣化してしまうんですね。
その対策として、音律の構成はそのままに、ちょっと「回して」みたわけです。

この♭型にすると、前回の記事で「▲」が付いていた♭系の作品が、概ね「○」になります
(中にはトッカータ二短調のように、「まだ▲かも?」なのもありますが)
ただし、五度圏図では通常型を「1つ回しただけ」なこの♭型、音は4つも違うので、そう簡単に通常型との間を行ったり来たり・・・はできません。
♭型は C#・G#・E♭・B♭の4音(上図で緑の★が付いている音)が全て、通常型より約10セント高くなっています。
つまりいくつかの異名音が、♭寄りにシフトしているので、♭系の調に有利になるのですね。

バッハ時代の鍵盤音楽は、修正ミーントーンから不等分律への過渡期にあり、その結果生じる「調性感」(調によって異なる響き)が重要視されていました。
この過渡期の音律は非常に多くの種類があるので、どれを使うかによって例えば同じ変ロ長調でも長三度や五度の音程が違い、一様ではないことになります。
ただよほど特殊な音律でもない限り、五度圏図の右側を中心とした領域は長三度を優先して五度が狭く、反対側はウルフの名残で広い五度が残っているか又は純正五度が並んでいる(従って長三度は純正よりかなり広い)のは共通しています。
なのでそのパターンを踏まえた上で、演奏したい曲に「プチ最適化」した音律を使えば、作曲家の意図を大きく外れることなく、しかも結構キレイに響く・・・が可能かと思います。

修正ミーントーンでバッハ作品をテスト

バッハのフランス組曲の中でも人気の第五番、冒頭のアルマンドを C#~Fでウルフを四分割した修正ミーントーンで鳴らしてみました。(繰り返し省略)



たびたび出てくるD#音、それと異名音のE♭が曲の最後に想定外出現!しますが、音律のD#・E♭兼用音(二音のちょうど中間の高さ)が、それに上手く対処しています。
また、何度かある約5セント広い五度の同時打鍵も、純正でないことは聴いて分かるけれども、音楽的に興を削ぐほどの傷にはなってないかと。

さて、「平均律クラヴィーア曲集」や「インヴェンションとシンフォニア」の通し演奏にはちと厳しい・・・なる判定を下したこの修正ミーントーンで、バッハの組曲系チェンバロ作品を鳴らして適合度を採点すると、(もちろん私見ですが)以下のような結果になりました。

○ ⇒ 合格!(とってもキレイ&人前で演奏する時にも十分使える!)
▲ ⇒ 可 (まずまず~まあまあ)
× ⇒ ちと無理あるな (不良音程が目立つ&不自然に歪む&聴きづらい etc.)

【フランス組曲】 1番二短調・・○   2番ハ短調・・▲   3番ロ短調・・▲
4番変ホ長調・・▲   5番ト長調・・○   6番ホ長調・・×

【イギリス組曲】 1番イ長調・・×   2番イ短調・・○   3番ト短調・・▲
4番ヘ長調・・○   5番ホ短調・・○   6番二短調・・○

【パルティータ】 1番変ロ長調・・▲   2番ハ短調・・▲   3番イ短調・・○
4番二長調・・▲   5番ト長調・・○   6番ホ短調・・○

フランス風序曲(パルティータ)ロ短調・・×

大雑把に言って、調号なし~#・♭1個はとても良く、それ以上になると調号が増えるにつれ微妙になってくるわけで、その点は「インヴェンションとシンフォニア」と同様です。
しかし「フランス組曲」以外は各組曲冒頭に、前奏曲、序曲、シンフォニアなど様々な名称の舞曲ではない楽章が置かれていて、中にはかなり規模の大きいものもあるのに(例えばイギリス組曲6番の前奏曲は195小節もある)、その割に転調は控え目で、いくつかの不良長三度を抱えるこの音律でも、思いの外良く「合う」と感じました。
○が付いてる組曲は、ほんとに良いです!

しかし、▲や×の組曲もまだまだ多いことから、バッハの鍵盤曲・音律事情を探ってみると・・・
可能性1)ある程度、組曲ごとに最適化した音律だった
可能性2)もっと均した音律だった
可能性3)歪んだり汚くなっても「コレが調性感だッ!」と開き直っていた(爆)

・・・1、2はどちらもアリな気がしますが、3は仮にそういう面があったとしても、もう少し均した音律でないと厳しいと思います。

なお組曲系以外も調べてみると、こうなりました↓↓↓

イタリア協奏曲・・○   半音階的幻想曲とフーガ・・○
(以上2曲は、ウルフ三分割ミーントーンでもOKだったので、四分割でも問題なし)

【トッカータ】 BWV910(嬰へ短調)・・×   BWV911(ハ短調)・・▲
BWV912(ニ長調)・・×   BWV913(ニ短調)・・▲   BVW914(ホ短調)・・×
BWV915(ト短調)・・▲   BWV916(ト長調)・・▲
(トッカータは転調が激しく、この音律ではやや苦しい面が)

とにかくこの▲や×をどうにかしないとイケマセンね。(^ ^;)
色々試してるんですが・・・「最適化」は、上手く行くものとそうでないのがあるし、「均す」と(この場合はその均した音律で「全部弾く」のが筋と思うので)○印の曲が劣化しちゃうんですよね。
ほんとに悩ましいことです、音律ってのは ──── 続く♪

スポンサードリンク 

ブログ内検索

最新コメント♪

[02/10 REIKO]
[02/09 Enrique]
[08/08 REIKO]
[08/07 ベルカント]
[08/04 REIKO]

スポンサードリンク

中の人より

管理人名:REIKO
★リンクはご自由に★
どのページでも構いません

カウンター

バーコード