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バッハの汎用音律を推測してみる

ウルフを等分割した広い五度4つと、残り8つが純正より約5.5セント狭い五度・・・の修正ミーントーン音律から、狭い五度をあと2つ減らしてバッハのチェンバロ曲(平均律クラヴィーア曲集は除く)に最適化した音律を考えてみます。
純正より約5.5セント狭い五度が6つになるので、-5.5×6=-33、-24-(-33)= 9 となり、およそ+9セントを適当な広い五度で分け合えばいいことになりますね。
これを6つの五度全体に「散らして」しまう・・・というのも少しナンなので、一部に純正五度を取り入れると、例えば次のような案が考えられます。



↑↑↑どちらも一長一短ありますが、両者はC#とE♭の高さが約2セント違うだけで、曲の中ではそんなに大きな差は出ませんでした。
それよりも重要なのは、こちら!↓↓↓



バッハに関しては、F~B にミーントーンの五度を配置した方が、結果が良いと感じるのです。
(色々と鳴らしてみて確かめました)
この配置は、白鍵の音程がミーントーンと同じになるんですね。
一般に「ラモーの音律」と言われているもの(解釈にはいくつかある)も、このタイプです。
ミーントーンで8つもあった純正長三度は、もうF-A、C-E、G-Bの3つしか残ってないので、修正ミーントーンというよりは不等分律に近いと言えるでしょう。

しかしこの「F~B配置」は#系に弱いのでは?というツッコミが来そうです。
理屈では全くその通りですが、実際にバッハの曲を鳴らしてみると、長三度が広いならば「それなりの」書き方をしているように思えます。
前回の記事で、#系の最適化音律なのにビミョー感漂っていた(笑)、イギリス組曲第1番イ長調のプレリュードを、最初の図の右側の音律で演奏してみました。



この音律の、音程的に不利な領域で音楽が展開している割には、上手くまとまって聴こえませんか?
純正長三度の出番はほとんど無いかわり、広めの長三度と明るくのどかな田園風の曲調が良く合っています。
もう一つ#の多いホ長調、フランス組曲第6番のサラバンドは・・・↓↓↓



テンポが遅く和音中心なので、フランス組曲全体の中で音律的には一番厳しい楽章です。
転調してロ長調になる箇所などは、実際かなりキツい響きになりますが、これこそ白鍵中心の調とは異なる調性感だ ─── と思って聴けば、そんなに不快な印象ではないです。
このフランス組曲第6番は、G・D・A・E・B・F#・C#・G#・D#・A#・E#・B#の12音しか使われてないので、理屈から言えばB#-Gにウルフを移動したミーントーンで弾けるはず。
しかし実際は、B#音が低すぎてコケる箇所がいくつかあり(サラバンド冒頭小節の二拍目など)、ミーントーンの五度ばかり並べた音律ではダメな音程が要求されていることがわかります。
純正より広い長三度があってこそ可能になる和音や旋律もあるということですね。
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懸案のイギリス組曲第一番イ長調

C#からFまでを広い五度にした修正ミーントーンでは、#が2つ以上ついたバッハの組曲がイマイチなので、♭系の曲に対して以前試みたように、今度は#系の調に最適化した音律を作ってみました。
4つの広い五度の位置を、通常型から時計回りにひとつ動かして、G#からCまでにします。



通常型と比べると、E-G#の長三度が純正になり、厳しかったB-D#もまあまあになります。
最悪音程は、C#-FだったのがG#-Cに移ります。
これなら通常型で微妙&ダメ判定だった組曲も、ワンランクアップしそうですよね・・・でもなんで(汗)なんでしょう???(^ ^;)

この#型修正ミーントーンで、イギリス組曲第1番イ長調・プレリュードを演奏してみました。



ダメ判定だった通常型よりは、良くなってる面もあるんですよ。
でも…どことなく不安定&音痴っぽい箇所があるのに気づきませんでしたか?
楽譜を見ながら聴いていると良く分かりますが、時々G#音が低すぎて変なんです。
イ長調ベースなのでG#音は頻出ですが、その全部がおかしいのではなく、直前や同時に鳴っている音との関係で、時々まずい現象が起きるようです。
実際、この音律ではG#が相対的に最も低い音なんですが・・・

この(組)曲だけでなく、パルティータ第4番ニ長調や、フランス風序曲(パルティータロ短調)、トッカータ嬰ヘ短調BWV910、同二長調BWV912でも、低すぎるG#が気になる箇所があります。
つまり#型にすると、一部の長三度は改善されるが、別の問題が出てくるんですね。
(もっとも、フランス組曲第3番ロ短調・6番ホ長調やトッカータト長調BWV916は、低いG#音が目立つ箇所が少なく、全体的には通常型より良くなりますが)

以前私は「平均律クラヴィーア曲集」や「インヴェンションとシンフォニア」以外のバッハのチェンバロ曲は、「#系」と「♭系」二種の音律を使い分けた、いわば二刀流じゃないかと思ってたんですよ。
で、そーゆーのがめんどくなったから(笑)、ウェルテンパーな音律にシフトしたんでは・・・とか。
しかし、どうもそうではないようです。
イギリス組曲はバッハの三大組曲の中では最も成立時期が早く(おそらくワイマール時代に原型が成立)、しかも第一番から書き始めたらしいとされています。
その曲が#系の調に最適化した音律でダメってことは、すでにこの時期にもっと均した音律(すなわちそれ一種)で作曲していたとしか考えられません

ではどう均せば良いのか・・・
ここでヒントになるのは、同じ修正ミーントーンでも「♭型」(F#からB♭までの4つが広い五度)は、バッハの♭系の曲に非常に良く適応し、「通常型」共々これらで良好に演奏できる曲がとても多かったことです。
つまり「#型」はバッハが使っていた音律と違いが大きいが、「通常型」と「♭」型はイイ線行ってるんじゃないだろか?
─── と考えると、仮にあと少し純正長三度を減らして音程の偏りを均すとしたら、どうすればよいかおのずと見えてきますね♪
(続く)

修正ミーントーンによるバッハ演奏会は可能か?

修正ミーントーンによるイギリス組曲第四番(ヘ長調)の、プレリュードです。
記事を読みながらBGMにどうぞ↓↓↓



ウルフを四分割した修正ミーントーンでバッハのチェンバロ曲を色々試していますが、通常型か♭型のどちらかで楽器を調律して、一回のリサイタル分(正味1時間半~2時間)のプログラムが組めるか考えてみます。



以前にも書きましたが、「通常型」ではこう↓↓↓なので ────

○ ⇒ 合格!(とってもキレイ&人前で演奏する時にも十分使える!)
▲ ⇒ 可 (まずまず~まあまあ)
× ⇒ ちと無理あるな (不良音程が目立つ&不自然に歪む&聴きづらい etc.)

ゴルトベルク変奏曲(ト長調)・・○
イタリア協奏曲(ヘ長調)・・○   半音階的幻想曲とフーガ(ニ短調)・・○

【フランス組曲】 1番二短調・・○   2番ハ短調・・▲   3番ロ短調・・▲
4番変ホ長調・・▲   5番ト長調・・○   6番ホ長調・・×

【イギリス組曲】 1番イ長調・・×   2番イ短調・・○   3番ト短調・・▲
4番ヘ長調・・○   5番ホ短調・・○   6番二短調・・○

【パルティータ】 1番変ロ長調・・▲   2番ハ短調・・▲   3番イ短調・・○
4番二長調・・▲   5番ト長調・・○   6番ホ短調・・○

フランス風序曲(パルティータ)ロ短調・・×

【トッカータ】 BWV910(嬰へ短調)・・×   BWV911(ハ短調)・・▲
BWV912(ニ長調)・・×   BWV913(ニ短調)・・▲   BVW914(ホ短調)・・×
BWV915(ト短調)・・▲   BWV916(ト長調)・・▲

○印の付いた曲だけで十分2時間以上あるので、ちゃんとプログラムが組めますね。(笑)
1つくらい▲の曲を入れるのも、対比がついていいかもしれませんし。
で、「♭型にすると▲印の♭系の曲が、概ね○になる」のですが、実は通常型で○のヘ長調とニ短調の曲はほとんど、♭型でもやはり○なのです。
(どちらがいいかは好みの問題・・・という感じ)
動画の音源は、♭型で演奏したイギリス組曲4番ですが、抜群の美しさですよね。

ここで、♭型で○の曲をまとめてみると ────
イタリア協奏曲、半音階的幻想曲とフーガ、フランス組曲1・2・4番、イギリス組曲3・4・6番、パルティータ1・2番、トッカータBWV911・BWV915(BWV913はまだ▲かも?)
↑↑↑こちらも通常型に負けない、充実したラインナップではないですか!

つまりちょっと音律に配慮して選曲すれば、修正ミーントーンによる「オール・バッハ・プログラム」は十分可能・・・というわけです。
(絶対ヴァロッティなんかより良いですよ♪)
アンコールには、「平均律~」や「インヴェンション~」から、音律に合った曲を用意しておけばカンペキですね!

ところで、「#系の曲で▲や×のはどうするんだ?」とツッコまれそうですが ───
もちろん#系も「プチ最適化」音律を考えて試してみました。
しかし、こちらは少々問題があったんですね・・・(次回に続く)

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