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怒涛の分散和音・エチュード「大洋」

ショパンのエチュード作品25-12 ハ短調・通称「大洋」は、多くの五度やハ長調の主和音・属和音が純正な、キルンベルガー第一法格好のデモ曲です。
破壊的とも言える怒涛の分散和音が、ストレートに迫ってくる威力はすごい!



♭3つのハ短調は、音階内にA音を含まないという意味では、第一法にとって安全調ですが、よくある五度上への転調でト短調になると、A♭⇒Aとなるので危険が増します。
しかしこの曲の転調は、同名長調のハ長調や五度下の変イ長調が中心で、ウルフのD-Aにはカスリもしません。
(こんな曲でウルフを弾いたら完全にアウトですが)

ハ長調に転調した部分↓



ペダル踏みっぱなしでCEGです ──── ハ長調の属七GBDFも頻出しますが、いずれも第一法では濁らず美しい響きになります。
極めつけは終結部分~ここもハ長調↓



fff(フォルテフォルテッシモ)は「できる限り強く」、しかも音程の狂いが目立ちやすい中音域のCEが含まれるので、長三度が広すぎる平均律には正直ツラい個所です。
しかしキルンベルガー第一法ならバッチリ純正!
CEG和音が安定していて揺れがないので、嵐が過ぎ去った後の静寂に一条の光が差すような、澄んだ最終和音が非常に印象的です。

もっともこの曲はその破壊的な曲調から、好き放題にありとあらゆる和音をかき鳴らしている印象を受けますが、実は意外と限られた範囲で想定内の転調・和声進行をしているだけなんです。
♭3つや4つの調ではA音は必要ないし、ハ長調部分でもA音の使用はごく少なく、そう考えるとウルフを踏まないのが当然とも言えるかも。

ピアノロール式シーケンサーの画面を見ると、A音が少ないのが良く分かります。
ハ長調に転調した部分↓ (クリックで大きくなります)



★A音が少ないので、この曲はキルンベルガー第二法で弾いても大差ありません

ショパンのエチュードはワルツほどでないにしろ、キルンベルガー第一法で弾ける曲が比較的多いのですが、その理由として「曲が短く書法や和声が単純」(エチュードだから当然?)な点があげられるでしょう。
なので「別れの曲」はともかくこの曲の場合は、一法適合は偶然かもな・・・と思わないでもないですね。
仮にそうだとしても、音律の長所が非常に良くわかると言う点で、第一法の威力をアピールできる絶好の作品なのは間違いないですけど。
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「別れの曲」のイメージが変わる!?

ホ長/短調つながりで、今度はショパンのエチュード作品10の3「別れの曲」を、キルンベルガー第一法で。
(とあるサイトでこの曲は一法はダメ云々…とありましたが、私的には非常に良好と感じます)



ホ長調は第一法では長三度が広すぎて和音が悪いので、本来なら向いてないはずです。
しかし冒頭、有名な旋律の部分は、音律の特性を十分に理解して上手く弾くならば(←ココ大事)、第一法でとても美しく響きます。
この個所は聴いてるだけだと簡単そうですが、旋律と内声を同時に担当する右手が技術的にも音楽的にも完全な指の独立を要求されるので、実は非常に難しいのです。
打ち込みでも細心の注意を払って調整する必要があり、最も難しい部類に入るでしょうね。

例えばこのような内声はごく弱く弾かないと、長三度が汚いのが一発でバレます。
(第一法に限らず、平均律でも同様です)↓



この旋律の一番いいところも…↓



バカ正直にフォルテシモで和音を弾いたら、中低音のうなりが耳障りです。
旋律を優先し、それを静かに支えて引き立てる和音がベスト。
これは単なる音律の欠点隠しやごまかしではなく、音楽的にもその方が美しいのです…それに気づかないといけませんね。
階名読みで「ドレシド・レミドレ・ミ~」となるこの部分は、ドとミの間が広い方が旋律がキマります。
どうも「歌えるような旋律」は、ピタゴラス音階的に音を取ると、美しく聴こえるようです。
(第一法ではホ長調の五度圏にスキスマが挟まり、惜しくもピタゴラス音階になってませんが)

余談ですが昔、まだオリンピックの新体操が生ピアノで伴奏していた頃、ブルガリアの優勝候補の選手(金髪の超美少女!)が決勝で、天井高く投げ上げた二本のクラブをこのEG#B和音に合わせて背面キャッチする最大の山場に、あろうことか大きく取り損ねて大減点、金メダルを逃したことが未だに忘れられません。
予選では完璧だったので、決勝でも当然バッチリと思っていた私も大ショックでした。
一番失敗したらいけないところでやっちゃったわけです。
他人でもこれだけ覚えているのだから、当の本人にとってはもう「魔のEG#B和音」、このフレーズは一生聴きたくないでしょうね…(^ ^;)


さてこの「別れの曲」を、平均律で聴いていた印象ってどんなですか?
「有名な旋律の後しばらくして、何かドロドロしたおっかない部分があるよね」が私のイメージでした。
しかしキルンベルガー第一法だと、あまりドロドロしません…というか、妙にキレイなんです。
特に con bravura(華やかに/技巧的に)とあるこの部分↓


★動画では縁が黄色になっている箇所

ここは曲のクライマックス(であるはず)なのに、平均律だとドロドロモヤモヤしていて、ピアニストが必死で弾いている割には、盛り上がりがイマイチです。
それが第一法だとクリスタルのような透明な響き!
最初にこの曲を第一法で聴いた時、一番驚いたのがそれでした。
単なる気のせい? いや、何か理由があるはず……ありました!
ここは長短六度の連続、六度は三度の転回なので、長短三度の狂いが大きい平均律の欠点が露呈する部分なのです。
だから濁って当たり前。

では第一法ではどうなのか…楽譜をよく見た私は驚愕しました。
第一法で純正となる長短三度(転回した六度、オクターブ以上離れたものも含む)で、同時打鍵またはペダルにより音が重なる隣接和音を、マーカーで塗るとこうなるんです↓



この部分の終わりまで、この調子で純正音程連発 ──── キレイに響くはずですよ!
つまりこのエチュードは第一法で演奏すると、音楽的な山場と音律の長所がピッタリ一致するんですね。
まさかホ長調始まりで、第一法の三度純正領域がこのような形で活用できるとは、思いもしませんでした。
これは新パターンですよ!(笑)
偶然だとしたらあまりに出来過ぎていると思うのは私だけ…???!

ショパン~ワルツホ短調・遺作

ショパンのワルツホ短調(遺作)を、キルンベルガー第一法で演奏してみました。



中間部分、画像が緑になるところは調号がシャープ4つのホ長調です。

ホ短調が和声的短音階ならD⇒D#になるので、第一法のD-Aウルフを踏みにくく、またE-GやA-Cの純正短三度が利用できるので第一法に向いていることは、以前こちらのシューマン「最初の損失」の記事に書きました。
しかし長い曲だと転調したくなるので、その場合は平行長調のト長調よりも、同名長調のホ長調の方がD-Aを使わずに済むので安全です。
このショパンのワルツは正にそれなんですね。
前回の「猫のワルツ」同様、ショパンの調号の少ない曲でキルンベルガー第一法で良好に弾ける代表的な曲でしょう。

序奏の後に出るメランコリックな主題です。↓


(クリックで大きくなります)

D#になってますね!
また最初の4小節は、旋律中のA音にも#がついています‥‥‥耳が音程に敏感な中音域では、第一法のA音が旋律的に低く聴こえることがありますが、このような主題なら心配無用です。

ところが、21秒~と49秒~から始まる旋律には、A音がたくさん出てきます。



ここはよぉぉぉ~~~く聴いていると、A音が少し低いのが分かるんですね。
しかし半音階的な旋律と和声のせいで耳が撹乱されているのか、決定的な不具合には聴こえません。
ここは曲中最も不安定な個所ですが、前後を「f」に挟まれてここだけ「p」なので、危ない音程も弱音で目立たず過ぎてしまいます。

中間部分、第一法のホ長調は長三度が広いので明るく、短調部分と好対照をなしています。
そしてまたホ短調に戻り、三度や五度の純正和音がたくさん使われているコーダでは、クッキリと透明感のある響きが美しいです。
ペダル踏みっぱなしの分散和音↓ (ホ短調のEGBが純正)



この曲は平均律だと全体に曇ってしまいます。
また第二法は狭いA-Eに抵触する個所がいくつかあり、向いていません ──── 第一法がベスト音律ですね。
本当にショパンが第一法で書いたのかは微妙なところですが、「猫のワルツ」と共にこの曲も第一法のデモ曲として最適だと思います。

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